はじめに
かつては総合病院など大きな施設でも准看護師の採用をしていましたが、令和に至っては正看護師しか採用しなくなった病院も随分多く見受けられるようになりました。
また近年の看護師の認定制度は分野が拡大され、一定条件のもと、医師の業務を行う事も可能となっています。
ですが前提にあるのは、正看護師でなければそもそも認定試験を受ける事さえできませんし、更に実経験を必要とするなど、正看護師以上の資格取得を目指す場合には多くの条件と時間が課されます。
そこで、早めに正看護師の資格を取得する為にもまずは、どのような進学コースがあるのか、また専門学校が良いのか、大学が良いのか、働きながら学校へ行くことは可能か、通信課程とは何か、につてなどなど、できるだけわかりやすく、要点を押さえてまとめるように心がけました。
現在准看護師さんでいらっしゃる方、また、これから看護師さんになりたいと思う方がご自身にとり最良の方向へ進む為の道しるべになれば幸いです。
※ここから先は正看護師は単に看護師と記載します。
1.看護課程と就業年数は別?
看護師になる為の進学には大学か、専門学校と言う事はご存知の方も多いかと思います。
看護学校で大学と言うと、看護課程4年制の看護系大学(就業年数4年)か、看護課程3年制の短期大学(就業年数3年)になります。
専門学校又は看護師養成所というと、看護課程3年制(就業年数3年又は4年)か看護課程2年制(就業年数2年または3年)の2種類になります。
看護師資格は、看護課程というカリキュラムで修得する単位(授業時間)によって定められ、2年制、3年制、4年制とがあります。
そのため、看護課程3年の専門学校には所定の単位を修得(卒業)するため、全日制(就業年数3年)と定時制(就業年数4年)があります。
同じように看護課程2年の専門学校にも、2年間で卒業する全日制と3年間で卒業する定時制とがあります。
※定時制の授業時間は13~16時過ぎの登校が多いようです。
※図:最短で資格を取る場合の進学コースを示していますので定時制を除きます。
1)看護課程と目指せる資格
看護師になる為に定められたカリキュラムを看護課程と言い、卒業までに必要な単位数は目指す資格により異なり、各看護課程は進学できる適格者の条件が定められていいます。
- 看護課程2年とは:74単位を2年間(全日)又は3年間(定時制)で修得します。准看護師有資格者が進学でき、正看護師国家試験の受験資格を得られます。※通信制もここに該当し、65単位を修得しますが、入学の為には条件があります。
- 看護課程3年とは:102単位以上を3年間(全日)又は4年間(定時制)で修得します。無資格者が進学し正看護師国家試験の受験資格を得られます。高校卒業後に看護師を目指す方が受験します。
- 看護課程4年:124単位以上を4年間で修得します。看護師国家試験に合格すれば保健師・助産師の国家試験受験資格が与えられます。
2)看護課程2年の学校とは
看護課程2年に進学できるのは既に准看護師免許を持っている方になります。
この場合でも中卒者は免許取得後、准看護師として実務経験を(通算)3年以上経なければなりません。
専門学校(看護師養成所)で、全日制は74単位を2年間で修得しますが、定時制では74単位を3年間で修得します。
卒業により看護師国家試験受験資格を得られます。
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3)看護課程3年の学校とは
看護課程3年には短期大学又は専門学校(看護師養成所)があります。
短期大学と全日制の専門学校では、102単位を3年間で学び、定時制(専門学校)では、102単位を4年間かけて学びます。
卒業により看護師国家試験受験資格を得られます。
保健師・助産師になる為には大学3年次編入をするか、1年の実務を経て1年間保健師養成所で勉強します。
4)看護課程4年の学校とは
看護系大学では、124単位を4年間で学び看護師と保健師・助産師国家試験のW受験ができます。ただし、保健師・助産師国家試験は看護師国家試験に合格しなければなりません。
5)中卒で進学できる看護系学校は
⑴5年一貫看護高校
中学校を卒業して入学できる学校に5年一貫看護高校があります。入学をすると以後の進学の為の受験がなく卒業時に高卒資格と看護師国家試験受験資格が与えられれます。
⑵衛生看護科
衛生看護科は、高等学校における准看護師養成課程で、卒業と同時に高卒と准看護師受験資格を得られます。
看護師国家試験受験資格を得る為には、更に2年制若しくは3年制の看護課程に進学し卒業しなければなりません。
⑶准看護師養成課程
中学を卒業すれば進学する事ができますが、最終学歴は中卒になります。
高等看護学校への進学は、准看護師免許取得後に実務経験3年を経て看護課程2年制の全日(2年間)若しくは定時制(3年間)に進学するか、7年間の実務経験を経て通信制の専門学校(2年)に進学します。
保健師・助産師を目指す場合は、大学への編入ができないため、看護師免許取得後に実務経験1年を経て保健師・助産師養成所へ進学します。
6)通信制課程の看護学校とは
看護課程2年制のカリキュラムで65単位を2年間で修得し看護師国家試験受験を目指します。
通信学部への入学ができるのは、准看護師免許取得後、実務経験7年以上を経た者になりますが、この条件を満たせば、中卒でも通信制学科に入学する事ができます。
通信制では一定の登校要件があるため、月に1~2回学校に行き、授業を受けたり、単位認定試験を受けなければなりません(スクーリング=面接授業)。
ですが、多くの場合仕事をフルタイムでこなす事が可能なので、常勤として働きながら、通学する事ができます。
通信制では看護学校以外に、放送大学で
2.学校選びは何を基準にすればいい?
1)目指す資格で学校を選ぶ
⑴とにかく最短で保健師又は助産師の免許を取りたい方
保健師助産師国家試験を最小年齢で受ける事が出来るのは、4年制の総合カリキュラムを修めた者で、国家試験の合格をもって22歳で、保健師又は助産師になれます。
いわゆるW受験になりますが、保健師免許の取得には看護師試験の合格が前提になりますので、看護師免許の取得も22歳になります。
4年制の看護過程を採用しているのは、医大の看護学部や看護大学(看護助産大学)といった高等専門学校になります。
4年制看護過程を採用している学校一覧を見る。
⑵まずは看護師免許だけ取りたいという方には
⑴ 准看護師有資格者は看護課程2年制へ進学します。
- 専門学校全日制(2年間)=22歳
- 専門学校定時制(3年間)=23歳
⑵ 准看護師をとらないで進むなら看護課程3年制へ進学します。
- 短期大学(3年間)=21歳
- 専門学校全日制(3年間)=21歳
- 専門学校定時制(4年間)=22歳
⑶ 5年一貫学校=20歳
⑶働きながら免許取得を目指すなら
- 准看護師→看護師 という2段階の経過をとり22歳(または23歳)で看護師になります。
高校を卒業後、准看護師養成所に入学し、医療機関に看護師見習いとして勤務しながら、2年間の通学過程で勉強し、准看護師試験を受験します(県知事試験)。
合格すると准看護師として勤務する事ができます。
准看護学校は医師会によって支えられていますので、医師会所属の医療機関への就職が入学受験には有利と言われています。
午前中は病院やクリニックで看護師見習い(助手業務)として働いて、午後からの授業に登校します。
1年生の10月ごろに戴帽式を迎えると、多くの施設(クリニックや病院)で、先輩看護師の指導の下採血ができるようになります。
2年間養成所に通い、知事試験である准看護師試験を受け合格をもって免許取得なります。
卒業見込みを含め免許取得後に看護課程2年の専門学校へ進学できますので、准看護師として勤務(バイト)しながら看護過程2年制に進学し22歳(定時制は23歳)で看護師になります。
⑷そのうち保健師・助産師になるなら
看護師免許取得後、看護師として1年の実務を積んで保健師養成過程1年に進学する事もできます。
大学の3年次編入の場合、実務経験なしで2年間勉強をします。
保健師・助産師になる為には大学3年次編入をするか、1年の実務を経て1年間保健師養成所で勉強します。
中卒の場合、高卒資格を入学条件に有する大学、短大、高等専門学校への進学や編入は出来ませんが、医療機関で助手として働き准看護師資格を取得後、3年の実務経験を積んで看護過程2年制(2年間)へ、更に1年の実務を経保健師師養成所(1年)に進学すれば、最短で24歳で保健師になれます。
2)何と言っても学費で選びたい
いずれもおおよその総額を示しており、学校により別途費用がかかる場合には異なる額になります。詳細については各学校のホームページなどをご参照下さい。
- 看護課程4年制:私立大学 500~700万円前後
- 看護課程3年制 ①私立の短期大学450万円前後 ②専門学校全日(3年間)270万円前後
- 看護課程2年制 全日制200万円前後
- 通信課程2年制 120万円前後
3.保健師・看護師免許は国家試験での合格が必要
1)保健師助産師看護師及び准看護師法とW受験
保健師・助産師・看護師及び准看護師の免許を取得する為には、それぞれの専門の知識を得て、保健師助産師看護師法に定められたそれぞれ異なる試験に合格しなければなりません。
試験発行元の違い
- 保健師・助産師 ⇒ 厚生労働大臣発行の国家試験に合格
- 看護師 ⇒ 厚生労働大臣発行の国家試験に合格
- 准看護師 ⇒ 都道府県知事発行の知事試験に合格
そして、保健師国家試験を受験する為には看護師の資格取得者、若しくは4年過程を卒業した者(見込み含む)でなければなりません。
4年制過程を卒業すれば保健師看護師国家試験の同時(W)受験が可能です。
ここでもし、看護師試験が不合格となった場合には例え保健師試験を合格したとしても免許を取得する事は出来ません。
4.このまま准看護師のままでもいいの?
准看護師として病院に勤務をしていても、患者さんの看護に関する仕事の内容(点滴、注射、処置等)は、看護師と変わりません。
ただ、現在は役職に就く事ができなくなりました。
30年ほど前は主任なら准看護師の方も割と見られましたが、現在は法律上の規定も厳しくなり、主任になる事はできません。
また、夜勤についても病院によっては一人での夜勤ができなかったり、准看護師同志の二人夜勤はできないなどの制限があります。
経済的理由により進学を迷っている方は、奨学金制度の利用がお勧めです。
准看護師の場合、職業安定所(ハローワーク)による職業訓練給付金の一環として、雇用保険を納めている者が利用できる奨学金制度を利用する事ができます。
貸与型の多い奨学金の中、このハロワの奨学金は、規定の年数で卒業、かつ国家試験をパスすれば、学費の70%が給付される制度です。
万一パスできなくても翌年合格できれば50%が給付されます。