目次
はじめに
栽培を初めて行う方の中には、春の暖かい時期に種を撒けばそこそこ自然に芽が出てすくすく成長していくのではないかと思う方もいらっしゃるかもしれません。
実は私がそうで、初めての家庭菜園では手当たり次第に種を撒き、幸運にも成長したものもありましたが、発芽さえしなかったものも多々ありました。
これは単に光が十分、不十分というだけでなく、植物には発芽適温(地温)や生育適温という適した気温が深く関係するからです。
種まきは時期がとても重要になりますので、この点を意識しておくと割と栽培はうまく行くと思います。
1.春まきと秋まき
種まきには、春まきと秋播きの他に、真夏以外もできる周年(通年)まきというのがあります。
種の播き時の違いは植物の性質によって区別されます。
1)春まき野菜の特徴
春に撒く種まきは3月~5月頃に行い、植え付けを4月~5月中旬にします。
気温が20~30℃の環境でよく生育でき日照時間の長い、春先から夏にかけて花をつける(長日)植物が主流です。
いわゆる『夏野菜』と言われるもので、夏に旬を迎える野菜の栽培が多くなります。
2)秋まき野菜の特徴
一方、秋にまく植物は、種まきは7~9月に行うものと、9月~10月に行うものがあります。
15~20℃の冷涼な低い気温でよく育ち、日が短くなる、秋に花を咲かせる(短日)植物です。
通常冬に旬を迎える『冬野菜』は、9月~10月に種を撒き、11月頃に植え付けをし越冬をさせます。
2.春まきと秋まき両方するなら
一応このような区分はされていますが、多くの野菜は春でも秋でも栽培できるので、時期をずらしながらタイミングを見計らい、上手に撒いて長く収穫を楽しむ事ができます。
例えば、ミズナは真夏を除いて春播きと秋播きの両方で栽培できるのですが、春よりも秋に栽培をした方が、より大きな株に育てる事が出来ます。
これは、ミズナが高温でトウ立ちしやすいをいう性質を持つからです。
その為、春から夏にかけては短い期間で栽培し、トウ立ちする前に収穫します。
一方秋播きでは、収穫は春先の気温が上がる前までに行えば良いので、栽培期間は比較的長く、大株に育てる事ができるのです。
このような特徴をもつ野菜は多くありますので、知っておくと栽培で失敗する事が少なくなります。
3.病害虫被害が少ないのは
病害虫被害に遭いにくいのは、秋播き野菜です。
春には植物がすくすくと良く育つイメージがありますが、実は病害虫が多い為、収穫を目前にしてダメになってしまう事も少なくありません。
特に害虫は、気温が上がり始めた5月頃から非常に多くなりますし、6月の梅雨入り前からはほぼ全ての植物に発生するうどん粉病、黒カビ、青ぐされなどなど対策を怠ると本当に残念な結果になります。
【水耕栽培】うどんこ病が進行しても大丈夫 ~重曹スプレーの使い方~
万全な対策をしていれば、勿論美味しい味覚を楽しめますが、初めて家庭菜園をする場合には春栽培は少しずつ始めた方が良いかもしれません。
4.気候が良いのは
春まきは、5月までは順調に進むのですが、6月頃から梅雨時期を迎えるので日照の確保が出来なくなります。
この点、秋は天候に恵まれ、湿度も低く、気温も安定するので、外での作業も長時間快適に出来るようになります。
ただ、9月から10月にかけて急激に気温が低下することがあるので、発芽適温を外れないように種まきをします。
5.日差しと気温の関係は?
夏野菜の多くは、太陽の光を沢山浴びる事で大きな株に育ちます。
ところが西のベランダでは日ざしが強すぎ植物が生育できないことも多くあります。
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これは植物の成長には光の強さと温度が深く関係しているからです。
ですが、秋に入ると日ざしが柔らかくなるので栽培できるようになります。
秋から冬に向かって栽培する植物は、ほうれん草や春菊などの半陰生植物も多く、比較的日当たりを選びませんので手軽に始められます。
もちろん、日ざしをたっぷり浴びて、じっくり育てる大きな野菜もあります。
ハクサイやダイコン、カブなどは、寒さに当たる事で甘みを増すと言われています。
6.春秋種まきお勧め 10選
これからご紹介する野菜は家庭菜園で人気の物ばかりです。
春でも秋でも種をまけるのですが、上手に栽培する為には多少のコツがあります。
日照度や地温、気温に影響を受けやすく、植え付けや間引きの時期を外すと株が大きく育ちませんので栽培スケジュールが重要になります。
1)ラディッシュ

2021年 8月5日
⑴栽培スケジュール
- 発芽適温:15~20℃
- 発芽日数:2~4日
- 生育適温:15~25℃
- 栽培期間:30~40日
- 収穫期間:真夏以外の5月~12月
- 発芽 率:85%以上
⑵カラフルな種がお勧め
野菜の中でも発芽率に優れ、栽培期間は40日前後と短いので、真夏を除いて通年栽培できます。
タイミングをずらしながら種を撒いて、収穫が切れないようにします。
アブラナ科なので春巻きでは虫が付きやすいですし、梅雨時期には日照不足で、初めて栽培するのであれば上手に丸くならないかもしれません。
ですが、9~11月の種まきでは、病害虫が減り、天候も晴れの日が多くなるので、満足のいく栽培が期待できます。
市販で見かけるラディッシュは赤丸はつか大根が多いのですが、現在は彩も綺麗な品種が沢山ありますので、カラフルなものを選んでも楽しいですよ。
⑶栽培方法・栽培記録を詳しく見る
家庭菜園 初めてのラディッシュ 失敗例 ~丸くならない理由~
【水耕栽培記録】ラディッシュの育て方、もう失敗しない~成功編~
2)リーフレタス・サニーレタス

綺麗な濃い赤色
⑴栽培スケジュール
- 発芽適温:15~20℃
- 発芽日数:2~4日
- 生育適温:18~23℃
- 栽培期間:40~60日
- 収穫期間:春4月~6月 秋11~12月
- 発芽 率:85%(以上)
⑵栽培の特徴
サニーレタスはリーフレタスに含まれます。半陰生植物なので半日しか光が当たらない場所でも以外に育つので初心者には是非、春も秋も種まきをしてほしいです。
ホームセンターで苗も販売していますが、発芽率が抜群に良いので種まきでも簡単に発芽できます。
こちらもラディッシュ同様、種まきをずらしながら長く栽培できます。
栽培のコツは2点で、①種まきのタイミングを間違えないこと ②強すぎる光が当たらない事です。
実はサニーレタスを撒いてみると、栽培環境が良いかどうかの目安になり、発色がきちんとあれば光の強さは足りていますし、発色がなければ光不足かもしれません。
強すぎる光は反って成長の効率を下げますので、カーテン越しの柔らかい光の下に、4時間程度(午前中の日差し)の光があれば成長します。
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【家庭菜園】秋の種まき失敗知らず ~サニーレタスが発色しない?~
3)春菊
⑴栽培スケジュール
- 発芽適温:15~20℃
- 発芽日数:5~7日
- 生育適温:15~20℃
- 栽培期間:40~50日
- 収穫期間:
- 発芽 率:55%
⑵栽培の特徴
病害虫が少なく栽培しやすいと言われていますが、実は発芽率55%と低いため、そこで挫折してしまう事もあるかと思います。
初めて種を撒くのであれば、多めに撒いてその半分が発芽すれば大丈夫です。
春栽培ではコンパニオンプランツとしてアブラナ科の野菜と一緒に栽培すると害虫被害に遭いにくいと言われています。
秋播きではより大きな株に育てる事もできますので、是非挑戦していただきたいものです。
※コンパニオンプランツとは育てたい野菜や花のそばに植えることでよい影響をもたらす植物のことで、別名、「共栄作物」「共存作物」とも呼ばれています。
春菊は葉の切れ込みによって3種類に分類されますが、流通が多く、一般に馴染があるのは中葉種です。
- 大葉種 葉は大型で切れ込みは浅い。中葉種より葉が柔らかく苦味が少ない。
- 中葉種 切れ込みが深い。国内で最も栽培が多い品種。
- 小葉種 葉が細めで切れ込みが多い。収穫量が少なくトウ立ちも早い
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4)ミズナ
⑴栽培の特徴
ミズナは冷涼な気候を好む野菜なので、家庭菜園では秋播きの方が長い期間栽培でき、より大きな株に育てる事ができます。
その為秋播きのイメージがありますが、春に撒いて夏前に収穫すれば、冬に収穫するものより小ぶりなものの、瑞々しい美味しいミズナをいただけます。
ただ、春栽培では気温が上がるとトウ立ちしやすくなりますので、注意しましょう。
⑵栽培スケジュール
- 発芽適温:20~30℃前後
- 発芽日数:3~5日
- 生育適温:15~25℃
- 栽培日数:春30~40日 秋80日前後
- 栽培期間:春3~7月 秋9~翌3月
- 発芽 率:85%(以上)
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【家庭菜園】春も秋もまきたい野菜の種~ミズナの栽培スケジュール~
アカミズナ(赤水菜)といって茎の色が紫色の品種もあります。
5)チンゲン菜
栽培の特徴
チンゲンサイは栽培日数が30~40日と短いので、害虫被害や病気の発症(連作障害)は少なく、連作も1年置けば可能(輪作年限)と言われていますので家庭菜園で作りやすい野菜です。
パクチョイなどの種類もありますのでお勧めです。
一日日の当たる環境で形の良い株に育ちます。
栽培スケジュール
- 発芽適温:15~35℃前後
- 発芽日数:3~4日
- 生育適温:15~20℃前後
- 栽培日数:30~40日程度
- 栽培期間:3月初~12月初
- 発芽 率:85%(以上)
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6)小カブ
⑴栽培の特徴
とにかく簡単の一言です。
半陰生植物なので環境場所を選ばす、放っておいても綺麗な丸い形に育ちます。
ラディッシュ栽培に失敗したら、こちらに鞍替えしても良いかもしれませんね。
⑵栽培スケジュール
- 発芽適温:10~25℃前後
- 発芽日数:2~7日
- 生育適温:10~20℃
- 栽培期間:真夏以外の5月~12月ころ
- 収穫日数:40~60日
- 発芽 率:85%(以上)
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7)小松菜
⑴栽培の特徴
冷涼な気候を好むコマツナは、春まきも秋播きもでき、真夏の種まきを除いて栽培を楽しめます。
通常アブラナ科はトウ立ちさせないように栽培するのがコツですが、コマツナはトウ立ち菜として美味しく頂ける野菜の一つでもあります。
⑵栽培スケジュール
- 発芽適温:℃
- 発芽日数:日
- 生育適温:℃
- 栽培期間:日
- 収穫期間:
- 発芽 率:%
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⑷お勧めの品種
病気や暑さに強いのは『いなむら』『きよすみ』『わかみ』。
高温・低温にも強いのは『つなしま』『浜美2号』『はまつづき』『はっけよい』
8)ミニ白菜
⑴栽培の特徴
結球をうまくさせる為には本葉7~8枚頃の大きい葉をしっかり育ててあげることが重要です。
その為にも結球させる時期を見越したタイミングで種まきをしなければなりません。
ミニ白菜の発芽適温は、15~20℃、生育適温は初期が18~20℃で、葉がまとまりだす後期は15~20℃が適温です。
品種によりますが、最適なのは8~9月の種まきになります。
春まきも勿論できますが、結球しにくいかもしれませんので、葉の風味を楽しむつもりで栽培しましょう。
⑵栽培スケジュール
- 発芽適温:20~35℃前後
- 発芽日数:3~5日
- 生育適温:15~20℃
- 栽培期間:60日
- 収穫期間:春:3~5月上頃 秋まき:7月中~9月上
- 発芽 率:90%(以上)
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9)正月菜
栽培の特徴
半日陰で旺盛に育ちます。
栽培したての頃、私はナスとミニトマトにこだわっていましたが、秋栽培で正月菜やコマツナ、ミズナ、シュンギクなどを栽培したらその面白さにはまりました。
成長がとても良いので初心者さんこそまずは挑戦頂きたい野菜です。
栽培スケジュール
- 発芽適温:15~20℃前後
- 発芽日数:3~5日
- 生育適温:15~25℃
- 栽培日数:30日~40日
- 収穫期間:真夏と真冬以外
- 発芽 率:85%(以上)
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10)ナス
⑴栽培の特徴
家庭菜園の王道です。
一日日光を浴びる事が出来て、広いスペースや大きなプランターを確保できるなら、是非栽培してみましょう。
春から苗で栽培して夏どりと秋どりの2度楽しめる野菜です。
⑵栽培スケジュール
- 発芽適温:15~20℃前後
- 定植気温:気温10度以上、地温15度以上
- 発芽日数:5~7日
- 生育適温:22~30℃
- 栽培期間:180~300日
- 収穫期間:春:2~3月頃 秋まき:7月下旬
- 発芽 率:70%(以上)
⑶栽培方法を詳しく見る
【家庭菜園】春も秋もまきたい野菜の種~ナスのプランター栽培~