1.ナスの品種と特徴
まずは、家庭菜園に向いているナスを中心にナスの品種を簡単にご紹介します。

画像:農林水産省「こんなにいろいろあるんだ!」より引用
1)家庭菜園向きのナス
⑴お勧めは千両ナス
家庭菜園に向いている品種と言えば、千両ナスです。
栽培しやすく、なり疲れしにくいので、秋までずっと収穫できます。
特に千両2号は形が良いので、料理にも幅広く利用できる便利な品種です。
⑵中長ナス
ナスの中でも生食に向いた品種で浅漬けやサラダに適しています。
代表的な品種は「味ナス」「大黒田」「真仙中長」などで着果がよく形も揃いやすいおすすめの品種です。
草勢が強く樹勢がよいため長期間の収穫が楽しめます。
プランター栽培に最適な品種なので是非試していただきたいと思います。
⑶長ナス
「黒陽」「筑陽」「飛天長ナス」「黒王」「庄屋大長」「陸前長」「久留米大長ナス」などこちらもホームセンターでよく見かけます。
実がなり始めると次々にとれると言われていますので家庭菜園向きです。
2)その他のナスの種類と特徴
⑴大長ナス
長さ40cmから60cmの長いナスで古くから九州を中心に栽培されていました。皮はややしっかりとした固めですが、中の果肉は柔らかく、握るとふんわりとした弾力が特徴的です。
⑵丸ナス
古くから関西を中心によく食べられてきた丸ナスは賀茂なすを筆頭に野球のボールからソフトボールくらいの大きさのものが主流です。
皮の色はほぼ一様に濃紺から濃い紫色で、肉質は一般的な千両ナスよりも固めなものが多いです。
⑶小茄子
長さ8cmほどまで、重さ30gほどまでのものをいいます。その中にも、丸小茄子と呼ばれる丸ナス系と卵型のタイプがあります。
⑷米(ベイ)ナス
ベイナス(米ナス)はアメリカのブラックビューティという品種を日本で改良されたものと言われています。「米ナス」と言えばヘタが緑で表皮が濃い紫色の大型ナスの総称として用いられています。
⑸水ナス
その名の通り水分が多くて柔らかく、あくが少なく独特の甘みを持つため、生でも食べられます。
他の品種に比べて独特な性質をもった品種です。
2.ナス栽培の特徴
家庭菜園では、ナスの実の大きさにこだわるよりも、木を疲れさせない為にも、柔らかい若い実を採るようにして、一つの木を長く栽培し、多くの収穫を楽しむ事を目指します。
プロの農家さんは、1株でナスを100~150個収穫すると言い、家庭菜園でも上手な方は30個以上収穫できると言われています。
1)栽培環境
高温多湿を好むナスは、夏の栽培が適しています。
暑さや雨に強く、栽培しやすいと言われていますが、一日中日が当たる環境でないと旺盛に育てる事はできません。
ナスは『肥料食い』『水で育つ』とも言われ、多量の肥料と水が株を大きくする為に欠かせません。
その理由は、成長と共に長く地中に張る根によるものですが、その根の長さは想像以上です。
のびのびと根が育つようなプランターを選ぶ事が重要です。
2)苗栽培のすすめと選び方
3月下旬から4月になるとホームセンターで苗を販売し始めます。
種まきから栽培するのも勿論良いのですが、生育初期の苗づくりが貧弱になると、その後の栽培に大きく影響します。
ホームセンターでしっかりした苗を購入するのが良いでしょう。
⑴苗の種類
苗には、『実生苗(自根苗)』と『接木苗』があります。
実生苗は種から栽培された苗で、100~200円程度の安価で購入できますが、土壌中の病気や害虫に弱いと言うデメリットがあります。
一方接ぎ木苗は、より病気に強い苗を作る為に、二つの異なる植物を、地下部の『台木』と地上部の『穂木』として品種改良したものです。
⑵連作障害に強いのは接木苗
ナス・トマト・キュウリ・スイカなどの果菜類は、根が土壌病害虫に対して弱く(連作障害)、一度栽培した畑では3~4年間同じものを作らないのが原則(輪作年限)です。
そこでその対策として古くから用いられてきたのが連作障害に強い植物の根を接ぎ木する『接ぎ木苗』の栽培でした。

ナスの接ぎ木苗。クリップから下が台木
クリップから下の部分(地下部)が『台木』で『味は良くないが病気に強い』という植物の根が、台木として専用で栽培されています。
プランター栽培でも土を使いまわす場合には接ぎ木苗が良いでしょう。
3)秋ナスと更新選定
秋ナスと言うのは、収穫を終え更に7月~8月にかけて行う更新選定(切り戻し)によって、新たな枝を育て、そこから成る実を再収穫する事で得られる実です。
※ナスの更新選定の仕方は後述
このような栽培をするためには、病害虫被害を予防し、肥料切れ、水切れしないようにこまめにお世話をすることです。
4)ナスの『なり疲れ』とは
ナスは高温を好むため、夏の収穫初期段階では盛んに収量を確保できるのですが、最盛期に向かって収穫量が落ちていきます。
これを「成り疲れ」と言いますが、ナスに限らず果菜類に多くみられる現象です。
木自体にスタミナがなくなる為、根の働きが悪くなり、肥料や水分を補っても吸収されない為に起こります。
なり疲れした場合、糖やアミノ酸を与えると再び根が活気を取り戻し、根から肥料や水分を吸収できるようになります。
ただ家庭菜園では、あまり実を大きくせず若どりをした方が収穫量は良いと言われますし、更新選定(根切りや枝切り)を行って木の若返りを図ります。
3.プランター栽培の必要物品
1)プランターのサイズ
ナスは、幅、高さがあるものでなければ株を大きくすることはできませんのでなるべく大きい物を選びます。
2)支柱・寒冷紗
支柱は、苗を支える為に、寒冷紗は防寒・防虫用のネットとして使用します。
ナス栽培では、二本仕立て、または3本仕立てと言って、必ず支柱を使用しますので定植時までに準備しておきます。
また、春栽培では害虫も多く付きますので寒冷紗(かんれいしゃ)も必ず準備しておきましょう。
これらは自分でそれぞれ用意する事もできますが、ネットの張り方に慣れていないとわずかな隙間からすぐに虫が大量に発生し、収穫目前でダメになる事もあります。
予算が組めるならセットで購入する事も良いかもしれません。
私が購入したのはこちら↓です。
4.苗の栽培スケジュール
1)種まきの時期と発芽率
- 発芽適温:15~20℃前後
- 定植気温:気温10度以上、地温15度以上
- 発芽日数:5~7日
- 生育適温:22~30℃
- 栽培期間:180~300日
- 収穫期間:春:2~3月頃 秋まき:7月下旬
- 発芽 率:70%(以上)
2)定植までの管理
※苗を購入した場合
⑴苗の定植
日当たりの良い場所を選びます。
①畑の場合:元肥多めに、石灰必ず!
定植の2週間以上前に苦土石灰(150ℊ)を散布して耕し、1週間前に堆肥(3~4㎏)、元肥(化成肥料150ℊ、過リン酸石灰30ℊ)を施して再度耕します。
定植2~3日前になったら畝を作り(幅70㎝/一条植え)、黒マルチをします。
※注意事項
- 根が大きく広がるので、土はできるだけよく耕しておく
- 化成肥料はN:P:K=8:8:8を使用
一般的な畝づくりと元肥
※1)作業しやすいと言われている畝は、高さ20~30㎝、畝間20~30cm、畝幅50㎝(以上)の様です。
※2)植え付けの3週間前に、1㎡あたり堆肥2.0㎏、2週間前に苦土石灰100g、1週間前に化成肥料70gを施すのが一般的です。
初めての家庭菜園~露地栽培・プランター栽培・水耕栽培の特徴~
水耕栽培と土壌栽培 肥料の種類と与え方・土づくりの基本とは?
プランターの場合、培養土を使うと手間がかかりません。
⑵植え付けの条件(定植適期)
①時期
一般地では最低気温10℃以上、最低地温15℃以上になったころで、大体5月上中旬頃になります。
種からの栽培では60日~80日後くらいです。
②苗の状態
本葉が7~8枚、1番花が咲く直前位のもの(最適)、または咲き始めのものを定植します。
植え付け前日にポットの苗に十分水を与えます。
※注意事項
- 適期を過ぎた定植は根が活着しにくくなり生育不良の原因になる
- 霜に弱い為晩霜が去った時期に定植をすること
③植え方
一条植えで、株間は50㎝位取ります。
苗は、畝面よりも2~3㎝高く植えますが、ポットから出した苗は、無理にほぐして根を切らないように注意します。
定植直後に水を与え、浸透移行性殺虫剤を一株ごとに約2g株元に散布します。
3)定植後の栽培管理
流れは、苗に支柱を立てて余分な脇芽は摘んでおきます。(整枝)
その後に追肥と水やりを行います
⑴整枝と脇芽かき
実をならす為の枝に支柱を立てます。
通常3本仕立てが多いですが、2本仕立ての場合もあります。
いずれも一番花がつく枝が主枝となります。
- 主枝…一番花がついてる枝
- 2枝…一番花の直下の枝
- 3枝…その下の枝
1番花がついてる枝を主枝にし、その直下の枝が第一測枝、一番花の下の方(地面側)が第二側枝になります。
下の方のわき目はかき取ります。
脇芽かきの注意
脇芽を指で摘むときに、枝にささくれができると、そこからないウィルスなどが侵入しますので注意しましょう。
⑶定植後の追肥と水やり
化成肥料を株本から少し離した位置で片側ずつ両側側に与えます。
一株当たり15ℊ位をばらまき、肥料と土が混ざるように耕します。
ナスは肥料食い、水で育つと言われていますので、肥料切れと水切れをさせないように気を付けます。
特に栽培初期の水不足は後に大きく影響を与えるので、表面が乾いていたら与え、忘れないように行います。
⑷収穫方法
開花後20日前後で収穫ができます。
一番果は、大きく育てると身なりが良くないと言われますので小さい内に収穫します。
こうする事で、株の負担も軽くなり、その後の生育が良くなり着果実しやすくなります。
⑸更新選定の方法
更新選定は、枝の半分から1/3程をバッサリ切りますが、まだ木の勢いがある内に行います。
- 時期:7月下旬頃~8月上旬に行う。
- 方法:なり疲れの苗を1~2節残して切り戻す。
- 手順①3本に仕立てた枝を1~2節残して切り戻します。
- 手順②下方に元気なわき芽が出ていたら、取らずに残してその先の枝を切ります。
- 手順③株本から30㎝ほど離れた場所にスコップを垂直に入れ、根切りをして新しい根を発根させます。
5.ナス栽培の失敗とその原因

実のなりがとても良い株:葉や花の色形がよく、花びらに勢いがあります。
ナスが沢山実をつける為にはいくつもの要素がありますが、指標になるのは、葉の色と形、花の色と形、茎の太さなどです。
1)葉の形
異常な場合の指標は以下のようになります。
⑴葉が丸まる ⑵葉が立ってしまう ⑶葉が黒っぽくなる ⑷葉がしおれる ⑸葉が黄色くなる ⑸斑点が出来る ⑹株ごと枯れる ⑺カビが発生する
詳細についてはこちらの記事でもご紹介しています。
水耕栽培 失敗例~なすの葉が異常な場合はどんな時?対処法は?実への影響は?
なすの水耕栽培 失敗例 葉がしおれるのは根が原因?土壌栽培との違いは?
2)花の形
株が健全な状態であれば花は大きく色も紫色が濃く、めしべが雄しべよりも長くなっています(長花柱花)。
ですがこのような状態にない時は、ほとんどが水切れか肥料不足なので、たっぷりとお水を与えて育てます。
水耕栽培失敗例 なすの花の色が薄い時の対処法は?もう手遅れ?結実は?
6.連作障害
連作障害についてはこちらをご参照ください。