目次
1.苗を購入する前に
失敗しない栽培をする為には知っておいた方が良い事は多々あります。
実は栽培で最も重要なのは苗づくりであると言われるほどです。
ここでは良い苗と言うものがどのような物かを知り、苗を購入する場合の失敗しない苗の選び方についてご紹介しています。
1)苗の種類
苗には種から育てた『実生苗(自根苗)』と、品種改良している『接ぎ木苗』があります。
⑴実生苗(自根苗)とは
種から栽培された苗で、100~200円程度の安価で購入できます。
ですが、病気や害虫に弱いと言うデメリットがあります。
⑵接木苗とは
より病気に強い品種に改良された苗です。
実生苗は病気や害虫に弱いのですが、これをカバーしたのが接木苗です。
病気の原因にはいくつかありますが、同じ場所に植えると起きる連作障害を避けるのは接木苗です。
接木苗は二つの異なる植物を、地下部の『台木』と地上部の『穂木』として品種改良したものです。
上の画像はナスの接木苗です。
クリップから下の部分(地下部)が『台木』で『味は良くないが病気に強い』という植物の根が、台木として専用で使用されています。
2)選ぶなら接ぎ木苗
初心者に向いているのは安価な実生苗と言われていますが、野菜の種類によっては接木苗にした方が手間をかけずに栽培できると言われています。
選ぶ基準で分かり易いのは、連作障害を起こさないで栽培できるかどうか、と言う事です。
ナス・トマト・キュウリ・スイカなどの果菜類は、根が土壌病害虫に対し非常に弱く、一度栽培した畑では3~4年間同じものを作らないのが原則の為、接ぎ木苗の購入をお勧めします。
連作障害や接木についてはこちらの記事でより詳細に分かりますのでご参照下さい。
2.失敗しない苗の選び方
1)良い特徴を覚える前に
一般に良い苗とは茎が太く、葉は厚みがあり、色が濃いものが良いと言われており、見た目の大きさ(丈)自体は関係有りません。
また良い苗にしろ悪い苗にしろ特徴は各部位で現れますので、これらを選別したところで多くの中から選び出すのは意外に困難なものです。
まずは初めに購入を避けなければならないものを押さえておきましょう。
2)これだけは絶対避けよう
- 害虫がいる:最低でも葉の裏、茎は確認
- 育生ポットの底から茶色い根が出ている:底を確認
- 老化苗である:早すぎる開花は要注意:早すぎる開花は危険
⑴害虫がいる
害虫は、葉の裏、茎などに潜んでいますが、葉などに虫食いの跡の様なものや、虫が貼った後のようなものが見られたら購入はよしましょう。
⑵根がポットからはみ出している
茶色の根が育苗ポットの底からはみ出ているものは避けた方が無難です。
市販の苗は、育苗ポットという育成用の小さな容器で栽培されています。
育苗ポットは、植物が定植を迎える前までの栽培に用いられ、効率的にかつより丈夫な苗を作る為に使用されています。
その為定植時期を迎えたら速やかに植え付けをしなければなりません。
ところが、この時期を過ぎた場合、育苗ポットで長く栽培した場合、又は生育が進んでしまった苗ではポットの底から茶色の根がはみ出てきます。
時期を失した定植は土への定着が悪い為、後の育成で栄養吸収が不良になると言われています。
こうした事を避ける為に苗底を確認しましょう。
⑶老化苗
老化苗とは、育苗中に何等かの原因で生育不良を起こした苗のことで、要因は多くありますが、特徴的なのはその外観です。
生育が停止した苗に見られるのですが、直径6㎝の小さなポリ鉢にある小さな苗が花をつける事があります。

5月に、6号ポットで花を咲かせたナス
この様な苗は、老化の進行により枯死する前に子孫を残そうとする植物の性質が現れたもので、花の期間も早く終わると言われています。
老化苗と育苗の重要性についてはこちらで詳細について記事にしていますので、ご参照下さい。
3.具体的な見分け方
個人の感想ですが、茎や株元を見みるより葉を見る方が分かり易い様に思います。
1)葉を見る場合
⑴良い状態とは
葉に厚みがあり、色は濃く、葉が密集しているのが良い苗です。
特に光合成は葉で最も活発に行われますので、葉がしっかりしている苗を選ぶと良いでしょう。
⑵悪い状態とは
葉の色が薄いまたは黄色い状態の場合は栄養不良です。
葉に斑点があるものは病気の可能性がありますので、避けましょう。
2)茎・株元を見る場合
植物の成長は、地上部だけでなく地下部の根でも同じよう行われており、しっかり根を張る事が出来る為にも確認しておきましょう。
⑴良い状態とは
茎は太く真っ直ぐのものが良いですが、根元まで見てぐらつきがないものを購入しましょう。
⑵悪い状態とは
茎が細い苗は購入を避けます。
またポットの底から黄褐色(茶色)の根がはみ出しているものも購入しないようにします。
4.双葉が黄色いのは?
苗を選ぶときには双葉がしっかりしているものが良いと言われていますが、5月中旬にホームセンターに行くと、多くの苗で双葉が黄色くなっていたり、一枚しか残っていないものを見かけます。
ですが、これも一つの植物の生理現象で、生育が進んでいる事を示します。
双葉の役割は、栄養分を蓄積し生育の為に供給する事にありますが、本葉が光合成を始める頃になると、栄養は使い果たされて不要になり、枯れて脱落していくからです。
この場合、土の上にのせたまま放置すると病気の原因になりますので、葉が落ちたら双葉に限らず速やかに取り除くようにします。
ただ、定植時期を考えると、生育が進んでいるのかもしれませんので、苗がホームセンターに出回り始めたらなるべく早めに購入しましょう。
5.苗の購入時期
春になると沢山出回る苗ですが、購入時期は植付時期の直前が良いのですが、植物により時期は異なります。
1)ナスやトマト
4月中旬~5月上旬ごろ(一花花が咲く前頃)から植え付けをします。
梅雨の様な多湿では病気の原因になりますので梅雨入り前には済ませます。
2)キャベツ
春まき栽培では4月から5月、夏まき栽培なら7月下旬から9月初旬、秋まき栽培では11月から12月頃になります。
3)イチゴ
9月下旬から10月下旬ごろに植え付けします。
6.購入後の管理
植物の性質に
先ほどお話しした『老化苗』になる原因の一つに光周性と限界暗期というものがあります。
例えばホームセンターによっては夕方や夜間、蛍光灯の光が当たっていることがあります。
わずかな光でも、実は植物は日照時間を感じ取り成長しています。
所が、そのような環境に置かれていたものが、蛍光灯などのない暗い自宅の庭先や畑に植えたとたん、秋が来た(若しくは逆のパターンも)と勘違いし、花をつけてしまうのです。
そのような事態にさせないためにも、苗は早い内にしっかりしたものを購入し、少しづつ定植する自宅の環境に慣れさせてあげるようにします。