目次
1.育苗ポットの利便性
育苗ポットは播種から本葉が出るまで、あるいは定植をするまでの間だけ栽培をする小さなポットを言います。
ホームセンターで苗を販売する際に使用しているのが、育苗ポットで、植物の種類にもよりますが、播種から成長に合わせて段階的にサイズを変更し、店頭に並ぶ頃には9号サイズのポリポットで販売されます。
土耕栽培ではよく使用する育苗ポットですが、その役割は以下の点です。
- 発芽が早いので収穫時期を早く導く
- 育苗中、畑を他の植物に使用できる
- 苗が小さい内は最低限の肥料で済み高率が良い
- 病気になった時等に隔離出来る(管理しやすい)
水耕栽培でも育苗ポットを使うメリットは2を除いて当てはまります。
水耕栽培では、土耕の様に土が茎を支える仕組みがありません。
そのため不安定になりがちですが、育苗ポットを使用する事で安定感が数段増しますので、是非育苗ポットを使用してみて下さいね。
今回の記事は播種から行いますが、苗を購入して水耕栽培容器に移植する事もできます。
2.播種から発芽まで
1)種まきの準備
⑴種まきに必要な物
いずれも百均で購入する事ができます。
- スポンジ
- カッター又はハサミ
- ピンセット ※出来れば先端が曲がっているタイプ
- 育苗用容器 ※牛乳パックで作成
- 種まきトレイ ※百均の猫除けシートを使用
⑵育苗容器は必要?
育苗容器は、種を植えたスポンジを管理する為のケースで、種まきトレイは種を植えたスポンジを乗せる為のトレイを言います。
種まきトレイとセットで使用します。
私の経験からですが、種まき時に気温が低い時は蓋つき容器で栽培をしていると順調に発芽するように思います。
また育苗容器は、苗が小さい間はまとめて管理できるので効率よく栽培できます。
⑶種まきトレイの特徴
この記事では種まきトレイとして猫除けシートを使用しています。
播種後、最初に出てくるのは芽ではなく根ですが、これが意外に長く伸びていきます。
スポンジ培地を直置きすると、根は下に進めず隣の培地に横に侵入してしまい、後のポット移植時に培地を取り出す際、根を引きちぎる事になるので、なるべく下に間ができるトレイを使用します。
スポンジ培地を置くトレイに最適なのは、根が下に伸びていくのを妨げない物でこの猫除けシートが丁度良いという訳です。
また育苗ポットに移す時には根をポットの下の隙間から出す作業をしますので、トレイを使用して根が真っ直ぐ下に伸びる様にサポートします。
⑷牛乳パックで容器を作る
水が入れられる牛乳パック引き出しを作ります。
まずは牛乳パックを2個用意します。一個は引き出しの外枠で、もう一個が引き出し部です。
①引き出しを作る。
引き出し部を作ります。上部2~3㎜で側面をカットします。

青枠の部分は固いので無理にカットしなくても大丈夫です。

解法部は切れ込みは入れずに折りたたんでホッチキスでとめます。
育苗容器は、種をセットして水を入れるので、切込みを入れない作り方になります。

青い線でカットして引き出しの外枠に。
もう一つのパックは線の部分(写真↑)をカットして引き出しの枠にします。

育苗容器 この中に育苗トレイを入れます。
②種まきトレイをセットする
百均の猫除けシートをハサミで容器に合う大きさにカットして、突起の長い方を下にして使用します。

余分な部分をカット

特記の長い方を下に向けてセット
2)種の蒔き方
⑴スポンジ培地の準備
①種を植える培地をスポンジで作る
1辺を2㎝位にカットして必要な個数を用意します。
牛乳パックトレイなら14個まで入ります。
スポンジの中央にカッター又はハサミで下まで切れ込みを入れます。
カッターやハサミは清潔な物を使用します。病気感染の元になります。

点の部分に種を植えます。
②スポンジに水を含ませる
カットしたスポンジにたっぷりと水を含ませます。
水を含ませてから種を植えます。
⑵種子の準備
①発芽適温・生育適温を確認する
季節に適した植物や野菜の種を準備します。
それぞれの種子には発芽適温・生育適温がありますので、時期を確認し適した種を用意します。
ポイント:発芽適温は地温の事で、気温より2~3度低いと言われていますので、水耕栽培の場合には、気温を確認して種まきをします。
又、栽培適温は発芽後に管理する気温になります。
ここではリーフレタスの種を準備しました。
※発芽温度が分からない場合一部ですが、こちらで確認できます。
⑶スポンジ培地への種の植え方
①一個の培地に2~3個の種子を植える
ピンセットで切れ込みに2~3粒の種子を植えます。
※ピンセットは先端の曲がっている物が重宝します。
※種の種類ごとにスポンジの色を変えています。

点の部分に入れると良い
植える深さはスポンジの中央位又はやや浅め位で大丈夫です。
種を植えたら指で押し再度水をよく含ませます。
ポイント:市販の種は発芽率が高いので初めから1粒で植えても構いませんが、2~3粒を植えるのはより丈夫な苗を選ぶためです。
②培地を育苗トレイにおく
種を植えたスポンジを育苗トレイの短い突起で固定されるように置きます。
③育苗容器に入れる
育苗トレイを牛乳パックで作った育苗容器に入れます。
④容器に水を入れて引き出しを閉じる
培地が乾燥しないように水を培地の下1/3程度まで入れます。
④容器に蓋をして暗所に置く
リーフレタスは好光性種子の為基本的に遮光は必要ありませんが、植えた当日は暗所で管理するのが望ましい様です。
2日目以降は明るい場所に置いて管理します。

完成
※ 発芽に光を必要としない嫌光性種子の場合、暗所で管理します。
3)発芽・発根
⑴発芽日数
発芽日数は植物により異なりますが早いものでは2~4日、遅いものでは2週間位かかるものもあります。
発芽とは最初の葉が出てきた事を言いますが、これを一般に双葉と言います。
※ 3枚目の葉が本葉と言い、本葉の枚数が栽培スケジュールの基準になります。
⑵日照
発芽を確認したら日光の当たる明るい場所(又はLEDライトの下)に速やかに移します。
播種後は(可能な限り)毎日観察し、芽が出たら速やかに光に当てます。
芽が出た状態で蓋を外さないと徒長の原因になります。
この時期に培地を乾燥させると苗を傷めるので注意します。
ポイント:芽が出たら速やかに明るい場所へ移動
植物は、種類によって日照度が異なります。
一日中太陽の光を浴びて育つのが陽生植物、半日陰(カーテン越しの光や木漏れ日半日ほどの太陽光)を好む半陰生植物、日陰でも成長できる陰生植物に分かれます。
各種野菜の種子性質と発芽適温、発芽日数、日照度を以下で検索できますので野菜の名前をカタカナでご入力ください。
野菜の名前 | 種の光反応 | 発芽適温 | 発芽日数 | 生育適温 | 光照度 |
---|---|---|---|---|---|
オクラ | ― | 18~25℃ | 3~5日 | 25~30℃ | 陽 生 |
ホウレンソウ | 無 | 15~20℃ | 5~7日 | 15~20℃ | 半陰生 |
カブ | 好光性 | 15~20℃ | 2~7日 | 15~20℃ | 陽 生 |
カリフラワー | 無 | 15~30℃ | 2~3日 | 18~20℃ | 陽 生 |
キャベツ | 好光性 | 15~30℃ | 3~5日 | 15~20℃ | 陽 生 |
コマツナ | 無 | 20~30℃ | 3~4日 | 5~35℃ | 半陰生 |
ダイコン | 嫌光性 | 15~35℃ | 2~4日 | 15~20℃ | 陽 生 |
タカナ・カラシナ | 無 | 15~20℃ | 3~5日 | 15~20℃ | 半陰生 |
チンゲンサイ | 無 | 15~35℃ | 3~4日 | 15~20℃ | 半陰生 |
ハクサイ | 無 | 20℃ | 3~5日 | 15~20℃ | 陽 生 |
ブロッコリー🥦 | 好光性 | 25℃ | 4~6日 | 15~20℃ | 陽 生 |
ミズナ | 無 | 20~30℃ | 3~5日 | 15~25℃ | 半陰生 |
ラディッシュ | 嫌光性 | 15~25℃ | 2~4日 | 15~25℃ | 陽 生 |
イネ | 30~35℃ | 5~7日 | 30~35℃ | 陽 生 | |
トウモロコシ | 無 | 25~30℃ | 7~10日 | 20~30℃ | 陽 生 |
カボチャ | 嫌光性 | 20~25℃ | 3~5日 | 20~25℃ | 陽 生 |
キュウリ | 嫌光性 | 25~30℃ | 4~7日 | 18~25℃ | 陽 生 |
ゴーヤ | 嫌光性 | 25~30℃ | 7~10日 | 20~30℃ | 陽 生 |
スイカ | 嫌光性 | 25~30℃ | 30日程度 | 25~30℃ | 陽 生 |
トウガン | 嫌光性 | 35℃ | 10日程度 | 25~30℃ | 陽 生 |
メロン | 嫌光性 | 30~35℃ | 3~4日 | 25~30℃ | 陽 生 |
ゴボウ | 好光性 | 20~25℃ | 10~14日 | 20~25℃ | 陽 生 |
サンチュ | 好光性 | 15~20℃ | 2~4日 | 陽 生 | |
シュンギク 春菊 | 好光性 | 10~20℃ | 5~7日 | 15~20℃ | 半陰生 |
レタス | 好光性 | 15~20℃ | 2~4日 | 15~20℃ | 半陰生 |
サトイモ | 栄養繁殖 | 25~35℃ | 30日程度 | 25~30℃ | 半陰生 |
シソ | 好光性 | 20~30℃ | 4~7日 | 20~30℃ | 陰 生 |
ショウガ | 栄養生殖 | 25~30℃ | 30~60日 | 20~30℃ | 半陰生 |
ミョウガ | 陰生 | ||||
セロリ | 好光性 | 15~20℃ | 7~10日 | 15~20℃ | 陽 生 |
ニンジンニンジン | 好光性 | 15~25℃ | 14~20日 早生7~10日 | 16~20℃ | 陽 生 |
パセリ | 好光性 | 15~20℃ | 14~20日 | 15~20℃ | 半陰生 |
ミツバ | 好光性 | 20℃ | 4~7日 | 15~20℃ | 陰 生 |
ナス🍆 | 嫌光性 | 20~25℃ | 3~5日 | 22~30℃ | 陽 生 |
ジャガイモ | 嫌光性 | 栄養生殖 | 15~30日 | 15~24℃ | 半陰生 |
トウガラシ🌶 | 嫌光性 | 30~35℃ | 5~7日 | 25~30℃ | 陽 生 |
トマト🍅 | 嫌光性 | 15~27℃ | 3~6日 | 21~26℃ | 陽 生 |
ピーマン | 嫌光性 | 30~35℃ | 5~7日 | 25~30℃ | 陽 生 |
イチゴ | 15~20℃ | 半陰生 | |||
サツマイモ | 栄養繁殖 | 25~35℃ | 40~45日 | 22~30℃ | 陽 生 |
エダマメ | 無 | 25~30℃ | 4~6日 | 28~28℃ | 陽 生 |
エンドウ | 半陰生 | ||||
ソラマメ | 無 | 20℃ | 6~7日 | 16~20℃ | 陽 生 |
ニラ | 嫌光性 | 10~14日 | 陰 生 | ||
ニンニク | 栄養繁殖 | 25~27℃ | 植付から1か月 | 28~20℃ | 半陰生 |
タマネギ | 嫌光性 | 18℃ | 7日程度 | 15~20℃ | 陽 生 |
ネギ | 嫌光性 | 15~30℃ | 7~10日 | 15~20℃ | 半陰生 |
正月菜 ショウガツナ | 好光性 | 15~20℃ | 3~5日 | 15~25℃ |
3.本体移植と育苗初期
1)移植に必要な物
- 育苗ポット:内径約4.8㎝ 高さ5.0㎝位 プラスチック製でスリット入りのもの
- ハイドロカルチャー:なくても可。
- 水耕栽培容器本体:百均の蓋付収納ケース(あれば浅型と深型)を使用
- ピンセット:根をスリットから出す為に使用(あると便利)。
※ 水耕栽培容器(本体)の作り方、ペットボトル栽培については以下の記事をご参照下さい。
【水耕栽培】100均アイテムで新自作容器~歴代の失敗容器を踏まえて~
【水耕栽培】育苗ポットをペットボトルで自作~発芽から容器への移植の仕方~
お勧めサイズは、内径7~10㎝位の物です。
リーフレタスなら内径4.8㎝でも良いかと思いますが、やや小さく感じました。どの植物も器が大きい方がのびのび育ちます。
ミニトマトやナスなら10㎝位はあった方が良いか思います(現在発注中)が、お好みで。
2)育苗ポットへの移植手順
⑴育苗ポットへの移植準備
苗を1本立ちにする(間引き)
培地一つに対して丈夫な苗を1本にします。
ポイント:間引きのタイミング
双葉がしっかり開いた頃、又は本葉3~4枚の頃と言われています。
- 双葉の時期に1本だちにするなら双葉が十分に開き、葉が大きく茎の太い苗を選びます。この場合、本葉が3~4枚になる頃まで育苗容器で育成してからポットへ移植します。
- 本葉3~4枚頃に1本立ちにするなら、根が良く伸びている1本を残して育苗ポットへ移植します。
ポイント:ポットへの移植時期の目安
- 移植の目安は幼芽の高さが15~25mm、根が30mm以上の長さです。ただ、育苗容器の中で成長が進みすぎると伸びた根が隣の培地に入り込む事がありますので、注意して下さい。
⑵ピンセットで移植する
培地のセット
育苗ポットを傾けてハイドロカルチャーを半分くらい入れ、培地を入れます。
苗の根元がポットの縁と同じ高さになるように培地をセットします。
可能なら、根がポットの隙間から1本でも出せる様にピンセットでかきだします。
ポイント 根を傷めないように注意

根を1本出しておきます
培地の固定
培地の周りにハイドロカルチャーを入れ安定するように固定します。
スポンジの表面がポットの縁の高さと同じになれば大丈夫です。
上の写真はリーフレタス。本葉があり根が長いです。下の写真はミニトマト(レジナ)です。本葉はまだ見えません。

ポット移植完成
3)ポット移植後の育成
⑴液肥の準備
ここではハイポニカの使用に沿って説明しますが、準備した液肥の説明に基づいて行ってください。
ハイポニカの希釈の仕方
ハイポニカは500倍に希釈して使用しますが、原液をそのまま混ぜるのではなく、それぞれを水に入れて希釈します。
ペットボトルへの作り置き 付属のスポイトを使用します。
- 500㎖の水:A液・B液を各1㎖
- 1ℓ の水:各2㎖
- 2ℓ の水:各4㎖
水耕栽培と言えばハイポニカでしたが、2種類の液を混ぜて作るタイプであること、プラスチックの容器だと白い後が残るなど、やや手間を感じます。
2022年2月にお勧めしているのはこちら
⑵水耕栽培容器(本体)の準備
希釈液を本体に入れる
希釈した液肥を水耕栽培本体に入れますが、ポット内の根がしっかり浸かるようにします。
育苗ポットを本体へセット(移植)
所定の位置にポットをセットします。
液肥がポット(根)に十分に浸かっている事を確認します。
苗が』小さい内は浅型容器を使用し、本葉が6~7枚の頃になったら深型(3~4L)へ移植します。

百均のプラケース 1.6~1.8L位
※中央の穴は空気穴で、ペットボトルを利用しています。
水耕栽培容器の作り方はこちらでご紹介しています。
【水耕栽培】100均アイテムで新自作容器~歴代の失敗容器を踏まえて~
⑶日照
光が十分当たる明るい場所に置いてそれぞれの栽培方法に従い栽培します。
光が不十分な場合徒長苗になり、生育不良になりますので、可能なら植物育成ライトを使用します。
ポイント:苗の乾燥に注意
育苗初期の光量不足、栄養・水不足は生育に致命的な影響を与えます。
4.種子の取り扱いについて
1)種の袋の切り方
市販品の種子は、大抵裏面に栽培方法が記載されていますが、商品により下部に余白があったり、上部に余白があるなど異ります。
表側からハサミで切り離して開封すると説明部分にかかってしまう事がありますので、着る時は説明文側を見ながら開封します。

右端の袋は下に下に軌陸とがありますが、他のものはありません。
予め写真に撮っておくのも良いでしょう。
2)開封済みの種の保管
袋に記載されている有効期限を守るのが一番ですが、保存する場合には高温多湿を下げ冷暗所で冷蔵庫などで保管します。
種は低温で休眠します。

開封済みの物は 牛乳パック引き出しで保存
トイレットペーパーの芯を帯にしました。
種まきの時期を記載して3袋ずまとめ、野菜の名まえを書いておきます。
開封後はなるべく早く使用するようにします。
おわりに
以上になりますが、参考になれば幸いです。
次は、移植後から収穫までについて、かかりやすい病気など併せて記事にしていきたいと思います。
最後までご覧くださりありがとうございました。