光周性と限界暗期
植物には生育の為に必要な暗期の長さがあります。
これは日照の長さでもありますが、重要なのは連続した暗期の長さになります。
この性質が重要なのは、栽培過程で不都合が生じた場合に起こる『トウ立ち』『老化苗』という現象を誘発してしまう事にあります。
この現象が起こると収穫に影響しますので是非知っておきたい性質の一つと言えます。
光周性とは
生物の営みは昼間(明期)と夜間(暗期)では異なる現象を示します。これを光周性と言います。
花を咲かせる為には日長が主要な要因(※注1)であり、植物がたどる経路は長日植物(長日条件)と短日植物(短日条件)と暗期の影響を受けない中性植物の三通りになります。
※注1:ここで言う『日長』とは昼間の(日照)時間が重要という意味ではなく、一日の明期(昼間の長さ)と暗期(夜の長さ)の総称の意味で用いています。
これらを見分ける為には『限界暗期』を知る必要があります。
限界暗期とは
花芽の形成に必要な連続した一定の暗期の長さ を限界暗期言います。
暗期が限界暗期より長くなると花芽を形成する植物を『短日植物』と言い、限界暗期よりも短くなると花芽形成をするのが『長日植物』という訳です。
重要なのは、日照時間ではなくこの限界暗期であり、限界暗期以上の暗期がなければ、長日植物でも花芽分化はしません。このような連続した暗期の具体的な長さは、多くの短日植物で約9時間以上と言われています。
また暗期の長さに依存しない植物を中性植物と言います。
このように昼の長さ(明期)と夜の長さ(暗期)の変化に応じて反応する生物が示す現象の事を光周性と言います。
光周性と限界暗期
分類 | 長日植物(長日条件) | 短日植物(短日条件) | 中性植物(栄養条件) |
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代表的な植物 | アブラナ・ダイコン・コムギ・レタス | アサガオ・コスモス・イネ・キク・オナモミ・シソ | エンドウ・トウモロコシ・トマト・ナス |
開花の時期 | 冬至後から夏にかけて開花 | 真夏から冬にかけて開花 | 体内に一定の窒素量が生成 |
暗期の長さ | 限界暗期より短くなると花芽形成する(日照が長い) | 限界暗期より長くなると花芽形成する(日照は短い) | 依存しない |
ポイント | 重要なのは連続した暗期の長さであり、限界暗期以上の暗期がなければ花芽形成はしない。 | ||
トウ立ちとは
トウ立ちの「トウ(薹)」は花茎のことを指し、『トウが立つ』とは、蕾が出てきたり、花茎(花を咲かせる為の茎)が伸びて花を咲かせる事を言います。
花を咲かせない葉菜類や根菜類が開花する事をトウ立ちと言います。
生育初期にトウ立ちした野菜は、葉菜類では葉が硬くなり、結球野菜ではうまく丸まらなくなります。また大根などの根菜類では根が太らず、すが入るなど収穫が出来なくなります。
他方でトウ立ちしたものを食するのが、菜の花やフキノトウ、ブロッコリー、カリフラワーなどです。
トウ立ちした紫蘇

5月に花を咲かせた紫蘇
老化苗とは
育苗中に何等かの原因で生育不良を起こした苗の事を老化苗と言います。
育苗中、問題があるにもかかわらず、気付かず栽培を続けていると老化苗になる事は珍しくなく、ホームセンターで販売されている苗にも紛れている事があるそうです。
育苗中の生育不良の主要な原因は、日当たりや風通しなどの環境要因の他、水や肥料の過不足などが挙げられますが、中でも育苗中の水切れは特に深刻で、その後の育成に大きく影響するようです。
老化苗は外観で見分ける事が出来ますので、ポイントを押さえそうした物は購入しないようにすることが大事です。
老化苗の特徴
老化苗は生育が止まってしまった状態ですが、そのような苗が花をつける事があり、これが老化苗の典型なのだそうです。
時に直径6㎝のポリ鉢にある小さな苗が花をつけるのは、老化が進行して枯れる前に種子を残す為で、その為に花の期間も早く終わるのだそうです。
また種から栽培する場合には、育苗の目標を明確にしてしっかりとした苗を作るようにしなければなりません。
なすの老化苗
一般になすの花の開花時期は6月~10月頃です。
こちらは、5月3日にホームセンターにあった苗で一番果に実が着きそうでしたので購入してみました。
このまま栽培をしてみたいと思います。

5月に、6号ポットで花を咲かせたナス

5月に着果したなす