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パン作りをする前に発酵だけは知っておきたい
パン作りって、ちょっと手が込んでいて大変ですよね。
生地を捏ねて、発酵させて、分割してまた発酵させて…やっと焼いたと思ったら思ったより美味しくないなんてことも…。
また手がかからないパンなんてのをSNSで見つけて、実際にやってみても到底パンとは言えない代物が出来たり…。
でも、そうした結果には必ず原因があり、その多くの場合で発酵の仕方に問題があると言われています。
発酵を失敗するとどうなるの?
発酵がうまくいかないと、膨らみの悪い硬いパンになります。
そもそもパン作りの工程には何故2度もの発酵が必要なのでしょうか?
それを知る事が出来たら、美味しいパンを作れるかも知れません。
※ 他にも記事をまとめていますので、ご興味あれば覗いてみて下さい。
記事のまとめ | |
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発酵とは
パン作りでよく聞く一次発酵や二次発酵ですが、そもそも発酵とは何を言い、何故一次と二次に分けて発酵という工程を踏まなければならないのでしょう。
発酵について調べてみると、『発酵とは、酵母・細菌などの持つ酵素によって、糖類などの有機化合物が分解され、アルコール・有機酸・炭酸ガスを生じる現象』 とあります。
この現象の意義は、微生物が嫌気的環境の中でエネルギーを獲得すると言う点にあります。逆にエネルギーを取り出す(生産)為に好気的環境(酸素下)で行わる現象が呼吸で、光エネルギーを利用して二酸化炭素や糖から有機化合物を合成するのが光合成です。
- 発 酵:無酸素環境でエネルギーを獲得する為に行われる現象
- 呼 吸:酸素下でエネルギーを生産する現象
- 光合成:光エネルギーにより二酸化炭素や糖から有機化合物を合成する現象
発酵と腐敗の違い
発酵という現象は実は腐敗にも見られるもので、その違いが何かと言うと人体にとって有益か否か、という一点です。
つまり、人体にとって有益に作用する現象が発酵であり、食品をより美味しくします。反対に有害に作用する現象が腐敗で、食する事が出来なくなったり、病気を発症したりする場合を言うわけです。
微生物の行う発酵の作用には様々な特徴があります。
特徴 |
現象 |
原因となる微生物 |
着色 | 菌体内に色素を持つ微生物が生育した時に食品自体に見られる色 | 微生物全般 |
異臭 |
微生物の分解作用により発生するガスの臭い。甘美な香、アルコール臭、腐敗臭等多用 |
※1パチルス属 乳酸菌 酵母 |
ネト⑴ | 食品中の糖から粘性物質(デキストラン)を生成。無色透明。 | 乳酸菌 |
ネト⑵ | 食品中のたんぱく質やアミノ酸などから粘性物質を生成。有臭で粘性が高い。 | パチルス属 |
軟化 | 食品内部で食品の組織を分解 | パチルス属 |
膨張 | 主な微生物は酵母で二酸化炭素(炭酸ガス)を発生させて起きる現象。パン作りに用いられる製造方法として利用。 | 乳酸菌 酵母 |
カビ | 目で確認できるほど生育した状態。 | カビ |
実は発酵か腐敗かの区別を明白に出来る基準はなく、人間の主観によって区別されます。
また細菌にしろ酵母にしろその呼び名も総称に過ぎず、酵母菌の中にも人体に害をもたらすものもあるのです。
発酵食品とは
微生物が行う発酵ですが、人体に有益に作用するものを食品の製法として利用したのが発酵食品です。
発酵に関る代表的な微生物を大きく分けると、以下の3種類になります。
- カビ(麹菌・アオカビなど)
- 細菌(乳酸菌・納豆菌・酢酸菌)
- 酵母菌(パン酵母・清酒酵母・ビール酵母など)
一般に発酵食品と言われる物は、ヨーグルトやチーズ、パンや漬物、バターや納豆と言った製品名で表記されていまが、発酵食品の原料になるのは、乳、米、麦、大豆などの野菜、アルコール等です。
乳酸菌や酢酸菌、酵母、カビと言った微生物は、これらの原料から栄養分をとって増殖し体内に様々な物質を作る一方で、その一部を対外に分泌します。この一連のプロセスが発酵なのですが、微生物により発酵の呼び名が変わります。
発酵食品の種類と製法の違い
発酵の仕方は、その微生物の作用により異なります。
アルコール発酵、有機酸発酵、炭水化物発酵、ビタミン発酵、アミノ酸発酵、核酸発酵、二次代謝物発酵(ペニシリン、抗生物質、酵素、たんぱく質)などが、あります。
ところで、発酵食品の中には醸造という言葉が用いられるものがあります。お味噌やお醬油、清酒等です。
これらは発酵と何が違うかというと、発酵では単一化合物を生産するのに対し、醸造では、微生物の代謝生産物そのものが製品になる、という事です。
醸造に関る微生物は麹菌、酵母、乳酸菌、酢酸菌で醸造微生物と言われています。
※醸造食品と言わず、発酵食品と言われる所以は何故なのか疑問が残る所ですが、これについてはまあこの辺で…。
乳酸菌が行う乳酸発酵
乳酸菌によって糖類が分解され乳酸を生成するのが乳酸発酵です。
ヨーグルトは牛乳に乳酸菌を加え、牛乳の『乳糖』という成分を分解して乳酸を生成することで作られる食品です。
納豆菌が行うアミノ酸発酵
納豆菌は、ダイズタンパク質を分解しながら増殖し、アミノ酸を生成する事で作られます。
納豆菌は乾燥や熱にとても強く、最強の菌とすら言われる為、酒造やお味噌、醤油、パン工房などでは納豆菌を持ち込まない為に納豆を食べてはいけないとされる事もあるそうです。
酵母が行うアルコール発酵
酵母は糖をアルコールと炭酸ガスに分解します。発酵の際に発生する炭酸ガスによりパン生地を膨らませます。
また、この過程で香り成分を生み出すのも酵母によるものです。
その為酵母はパンのみならずお酒等多くの食品にも用いられますが、酵母の種類も多く用途によって使い分けられ、ビール酵母、ワイン酵母等その種類はとても豊富です。
イーストと酵母の違いは?
パン作りの為の酵母を大きく分けると「イースト」と「天然酵母」の2種類があります。
イーストは市販され、パン専用の酵母として基本的に1種類の酵母を培養させたものです。
他方天然酵母は穀物や果物など自然界にある酵母を育てたもので、乳酸菌など他の菌も混ざって存在しています。
パン作りにおける発酵の意味 何故2回?
手作りでパンを作る時の一般的な工程は ⑴ミキシング(材料を混ぜて捏ねる) ⑵一次発酵 ⑶生地の分割と丸め ⑷ベンチタイム ⑸成形 ⑹二次発酵 ⑺焼成 の7工程です。
特に手ごねパンで最も重要な工程は、⑴のミキシングと⑵と⑹の発酵ですが、二次発酵(又は最終発酵)はパンの焼きあがりの形を決める最重要工程とも言えます。
この二次発酵がうまく行かなければ美味しいパンにはなりません。
そもそも何故パン作りの工程は二次発酵若しくはそれ以上の発酵が必要なのでしょう。
一次発酵も二次発酵も酵母(イースト)の活動によって炭酸ガスを発生させ生地を膨らませる作用があるのは同じですが、その意味合いは異なります。
一次発酵の目的とは
一次発酵では、捏ね上げた生地をひとまとまりにして発酵を行います。これは、ガスを発生させ生地を膨らませる為に行います。
しっかりと捏ね上げられた生地ならば膨張に耐える事ができ、発酵がうまく進みます。
ただ、この時点では発生したガスはまだ均一ではありません。
その為、一次発酵をしただけでは通常成形をしないのですね。
この不揃いなガスを抜くためにパンチを行い、ベンチタイムで生地を休ませます。
ベンチタイムをとる事で生地が緩み、綺麗に成形しやすくなります。
二次発酵の目的とは
ベンチタイムを経た生地は二次発酵によりキメを整えられます。これが二次発酵の目的です。
一次発酵では不均一だった炭酸ガスの大きさが、この工程によりキメが細かに整えられてより弾力のある生地に仕上がるのです。
発酵によってパン生地を膨らませる為には、それに耐えられる生地作りが必要です。つまり、こうした膨張に耐えられるしっかりとしたグルテンの多い生地を捏ね上げて行かねばならない、という訳です。
発酵時や焼成時に生地が乾燥するとどうなる?
発酵時や焼成時に生地が乾燥してしまうと、表面の生地が伸びず発酵がうまく行かなかったり、ボリューム感の少ないパンに仕上がります。
焼き立ての食パンは柔らかいのに翌日には固くなるのは何故?⇒製法が違うから
捏ねや発酵も上手にできて焼き上がりも完璧なのに、翌日には固くなりがっかりした事はありませんか?
これは家庭で作るパン作りのレシピが、主に、捏ね上げから焼成までを通しで行う『ストレート法』によるものだからです。
実はパン作りの製法にはいくつかの種類があり、それぞれの製法により特徴が異なり、ストレート法の他に『中種法』『ボーリッシュ法』『オーバーナイト法』などがあります。
これらは、小麦粉を熟成させることでパンの風味をより豊かにする方法になります。
発酵を理解したところで、今度は熟成やそれぞれの製法についても知ってると良いかも知れませんね。以下の記事で詳細をまとめていますので是非ご参照下さい。
『【手ごねパン】中種法・ボーリッシュ法・オーバーナイト法の違いとは【手ごねパン】中種法・ボーリッシュ法・オーバーナイト法の違いとは』