家庭菜園に真剣に取り組んでから、色んな事を疑問に思うようになりました。
例えば、徒長についてや発芽の仕組み、根の構造についてなど、疑問に思う事が多く色々調べてみては記事にまとめています。
水耕細微をメインにしていると連作障害はあまり関係ないのですが、実家の小さな庭の更に小さな片隅を借りているので今回この課題について触れておくことにしました。
連作障害がおこる野菜は多いですが、全ての野菜に見られる現象ではなく、一部の作物では見られないようです。
それは何故なのか、今回その事が一番の疑問に思いました。
連作障害自体の根本的な原因は、土壌中に在ります。まずは連作障害の原因と、連作障害を引き起こす野菜の種類を見る事にしましょう。
目次
連作障害とは
連作障害とは、同一作物(同じ科の野菜)を同じ畑で繰り返し作り続けることによって土壌や微生物間でバランスが崩れ、その為に作物が生育不良を起こし、収穫が落ちてしまうという障害の事を言います。
土壌中での問題が引き起こす連鎖反応
1.土壌中の栄養不足又は過多
植物が成長する過程では栄養が必要である為、土壌から吸収していますが、植物の種類により吸収される要素が異なる為、連続して栽培をしていくと特定の成分のみが不足(又は過多)した状態となり植物にとって劣化した環境となるのです。
2.天候の変化によるストレス
このような生育過程で土壌中での栄養不足或いは過多はおきますが、それ以外にも、天候による雨量・日射量の変化といった生理的現象も植物に生理障害をもたらします。
3.病害虫の増加
特に養分やミネラルバランスの崩れた土壌では、微生物にも偏りを生じさせる事になります。
本来土壌中での微生物は、様々な生物の死骸を餌として分解し、二酸化炭素などのガスや水、植物の生育に必要な養分に変えるという重要な役割を担い、更に根の付近で植物を病原菌から守っています。
しかし劣悪な土壌環境では微生物は活性を失いカビやウィルスと言った病原体が増殖する為、虫害障害が起きます。
実は、連作障害で最も問題となるのがこの病原菌の増殖です。
通常、植物は根から養分を吸収しますが、一方で養分を分泌しています。これにより根の周囲では大量の微生物が活発に活動する事が可能となるので、病害菌が侵入する事はなく、耐性を持ち根を病原菌から守っています。
ところが、作物が収穫を迎える事でこのバランスを崩してしまうのです。
微生物によって守られていた根ですが、収穫により土壌中には根が残骸として残ります。その残根に付着した病原性微生物が連作する度に蓄積、増殖し、新しく植えた植物の根を攻撃します。すると根を守っていた微生物では病原微生物の攻撃を防ぎきれずに、侵入され発病してしまうのです。
⑴代表的な土壌障害

病原体であるカビやウィルスが土壌中で増殖する為に感染しやすくなる病気です。主な症状をまとめました。
①青枯れ病
- ナス科や、ゴマ、イチゴ、ダイコン、カブで好発する。
- 日中は先端の茎葉が急に水分を失ったように萎れる(萎凋する)。
- 朝有・晴天で一時回復するが7~10日で青枯れとなる。
- 進行により下葉から枯れはじめ、いずれ枯死する。
- さらには根が消失・脱落する。
➁根こぶ病
- アブラナ科で好発する。
- 初期には葉や茎が日中に萎れ夕方に回復
- 進行により生育不良、生育停止が起きて枯れる。
➂萎黄(いおう)病
- イチゴやキャベツ、大根で好発する。
- 葉が下から黄化する。
- 株が萎れている。
- 榛葉が奇形になる。
④半身萎凋(はんしんいちょう)病
- オクラ、ジャガイモ、トマト、ナスで好発。
- 初夏から梅雨時期と初秋の低温期に出現しやすい。※萎凋病は地温が高い時に好発する。
- 初期には葉の半分や株の片側のみが黄化し萎れる。
- 進行により全体に拡大し枯死する。
⑤ つる割病
- キュウリ、ゴーヤ、サツマイモ、スイカ、マクワウリで好発
- 初期には日中につるが萎れる。
- 進行により全体に拡大し地際部分から黄化しヤニが出る。
⑵代表的な生理障害
天候などの生理的現象によって得られる栄養素を含み、様々な養分が過不足となり障害を引き起こします。植物にとって重要な要素は3大要素を窒素(N)・リン酸(P)・カリウム(K)とし、中量要素はカルシウム(Ca)、マグネシウム(Ma)硫黄(S)になります。
① 窒素過多
成長に最も深く関与し特に葉や茎を大きくします。過剰に与えると樹勢ばかりが強くなり蔓ボケを起こします。
➁ カルシウム欠乏
カルシウムは、細胞壁や細胞膜を強くし、耐病性を強化する要素です。
➂ マグネシウム欠乏
タンパク質構成要素です。
➁➂は欠乏により虚弱化して行きます。
⑶代表的な土壌虫害
特定の害虫が増殖する事によって引き起こされる障害です。
- センチュウ
センチュウは種類が多く、2万種いるとも言われ、農家の方が最も嫌う害虫の一つで、ジャガイモシロシストセンチュウ、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウ、ダイズシストセンチュウ、イネシンガレセンチュウなどがあります。
症状は感染する植物により異なり、黄化するもの、緑化するものがあります。
連作障害を考慮しない野菜と輪作
よく見る説明書きに「この野菜は連作障害あがる為、同じ○○科の野菜は連続して植えないように」という文言があります。
では、連作障害を起こさない野菜はあるのでしょうか?
連作障害の根本的な原因が、作物の生育過程や天候といった生理的要因に起因する土壌環境の悪化に伴う病害菌の増殖であるとすると、あらゆる種に当てはまり、起こさないと言う事はあり得ないように思えますが、連作障害が起きにくい野菜は確かに存在しています。
連作障害は、連作障害を引き起こす野菜はあるか・ないか或いは引き起こすか・引き起こさないかという観点で捉えるのではなく、連作障害に強いか弱いかという概念で捉えます。
例えば連作障害を考慮しなくて良い野菜の代表的な例は、ユリ科のネギ・玉ねぎ・ニンニクなどです。これらは毎年同じ場所に植えても正常な形で収穫を迎える事が出来る、いわば連作障害に非常に強い野菜と言えるでしょう。
反対に非常に弱い野菜の代表格はウリ科のスイカやメロンで、5~6年は同じ場所での栽培は避けなければなりません。
このような一定の期間をおいて栽培する事を輪作(りんさく)と言い、一定期間の制限を輪作年限と言います。輪作年限は野菜の種類により異なりますので以下にまとめておきます。
野菜の種類と輪作年限

科で一括表示した年数の場合、文献により異なりますので、参照値として頂きます。
表の様に、連作障害は個々の野菜に対して引き起こされるのではなく、何科という分類でひとまとまりで起こす為、違う種類の野菜でも同じ科の野菜では連作をすることが出来なくなります。
連作障害に強い野菜と弱い野菜の違いとは
作物を栽培する上で避けては通れない連作障害ですが、毎年植える事が出来る植物がある一方で、5~6年もの間植える事が出来ない植物があります。
何故そのような違いが生じるのでしょうか。
繰り返しになりますが、土壌環境の悪化で最も問題となるのは、病害菌の増殖です。連作により特定の作物から栄養を得ている特定の微生物が増えてしまうからでした。
彼らもまた生物である以上、植物から分泌される養分がなければ生存が難しくなるようにも思えますが、カビや菌はひと度養分を得られなくなると休眠状態に入る為一定期間の生存が可能となります。
そしてこのような休眠中の期間に植物が植えられると、休眠から目覚め植物に侵入して発病に至らしめるのです。
従って、休眠胞子の生存期間が輪作年限であり、病害菌の種類により年数が異なるという訳です。
連作障害対策
原因が分かれば対策を打つことは可能です。家庭菜園でのいくつかの予防策を見てみます。ただ、家庭栽培で簡単かつ有用な方法は、1-⑵土壌の入れ替え 1-⑷土壌改良材の利用 と、2-⑵接木苗の利用でしょう。
1.土壌に対する対策
⑴ 輪作をする
前述した通りです。
⑵ 適切な肥料の管理
作物の生育に応じた必要な施肥を行う事で、生理障害の発生を抑制しますが、土壌診断が必要になります。
⑶ 土壌の入れ替え
- プランターや鉢植では毎回新しい土を使用すると安全です。
- 地上の場合は、他の場所から性質の異なる土を混ぜたり、深く掘り起こすなどすると良いでしょう。
⑷ 有機物の投入
- 緑肥作物や堆肥などの有機物を土壌に投入する事で、微生物を多くさせ病害虫の発生を抑制します。
- また、収穫後に有機肥料を施す方法もあります。
⑸ 土壌の消毒
- 消毒剤を使用する場合と使用しない場合があります。
- 太陽熱を利用した消毒方法の例 夏季の気温が高い時期にポリマルチを土壌に張り、土壌温度を上昇させて病害菌を駆除します。
⑹ 土壌改良材の利用
土壌中の栄養素・土壌微生物の崩れたバランスを野菜栽培に適した状態に改善します。
2.植物に対する対策
⑴ コンパニオンプランツの利用
コンパニオンプランツとは、違う種類の野菜を混植する事で病害虫の発生を抑制し成長を助ける役割を果たす植物のことを言います。
ただし、植物には組合せと期待できる効果があります。
⑵ 接木苗の利用
野菜の茎の根元で異なる2種類の品種をつなぎ合わせる事を『接ぎ木』と言い、地上部を「穂木」、地下部を「台木」と言います。
台木には味は良くないが病害虫に強いという植物で、穂木には味は良いのに病害虫に弱いという植物が用いられます。
台木は専用の植物を使用しますし、栽培は困難と言われていますのでホームセンターで接木苗を購入するのが確実でしょう。
元々は果物類で多く見られたようですが、現在では優れた野菜を作る為、特に良質な果菜類を栽培する為に広く行われているそうです。
注意するのは、深植えしないと言う事です。
接木苗には目印となる物が付いていますのでそれがみえるように植えます。

穂木と台木の接合部分を地面に近い位置で植えてしまうと穂木から自根が伸びて地中に入り成長を始め、接木の効果は半減してしまうからです。
連作障害について以上で終わります。お役に立てば何よりです。ありがとうございました。