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なすの花の正常な色と形
十分な日照で、昼間は25~30℃、夜間は15~20℃の環境で育成されたなすは、長花柱花になりやすく、この状態が見られると結実しやすいと言われています。
しかし、花の色が薄かったり、小さい場合には栄養不足によってそのまま落ちてしまう事もあります。
一般になすのつぼみ5月頃から見られるようになります。葉の脇に紫色をしたつぼみが膨らみ、5月中旬になると一番花が下を向いて開花をします。

なすの発育状態は花を見ればわかると言われるほど特徴的です。
株が健全な状態であれば花は大きく色も紫色が濃く、めしべが雄しべよりも長くなっています(長花柱花)。ですがこのような状態にない時は、ほとんどが水切れか肥料不足なので、たっぷりとお水を与えて育てます。
開花は5月~10月頃で、開花後15日~25日(2週~4週間)ほどで結実して実が付き収穫できるようになります。
栄養状態は遅くとも花が咲く前に判断を
花が咲けば、現状の栄養状態を手にとるようにわかるなすの花ですが、花が咲いてから栄養不良、脱水に気が付いたのでは少なくとも一番果に実を付ける事は難しそうです。よしんば実がついても石なすになるとか。
実は先日水耕栽培で咲いたナスの花が中花柱花だった為、改めて育て方を振り帰り、長花柱花の一番花を咲かせる為の育て方を、一番花の開花期を基準にして振り返ってみました。
土壌栽培もしていますのでその手順を引用しつつ、水耕栽培ではどう応用すべきだったかを具体的に対策出来ればと思います。
来年は、遅くとも一番花が咲く前までに栄養を整えて行きたいものです。その前に秋なすの苗が出るので、その日に備えて今から準備です。
一番花を基準にした栽培スケジュール
一番花が咲くまでは12~15㎝ポットで育苗を
販売されているなすは多くが9㎝ポットを使用し、本葉6~7枚の若い苗が店頭に並びますので、まずは12~15cmのポットに鉢上げして一番花が開花する直前まで育苗するのが良いそうです。
定植する頃(播種から60~80日)には葉は8~10枚になりますのでそれも目安になります。
育苗の重要性
育苗が勧められる理由は、まだ若い苗に対して環境を整備して育てることによって、雨風や気温といった自然の影響を受けにくくし、丈夫で良い苗を作れるからだそうです。
反省:確かに私はつぼみもつかない時期に苗を低温にさらし、葉を黒くさせてしまいました。室内栽培だからと常に窓辺に置いていた油断の表れかもしれません。
また、室内の明るい窓辺での栽培と言っても、十分に光があったわけではありませんでしたので日照問題は大きかったと思います。
こうしたことから植物の栽培には、温度が重要である事を再認識しました。これは、光合成が温度と二酸化炭素に依存するからです。そして温度管理をしなければならないのは、発芽適温、生育適温、そして地温でした。
4月の苗の購入では、まだ寒い日が多かったので、無理に水耕栽培に移行せず育苗した方が良いのかも知れませんね。
植え付け時期
植え付けは具体的には5月頃に行いますが、つぼみの小さな若苗では過繁茂になりやすく、一番花が咲き終わっているような老化苗では活着不良になりやすいようです。
一番花のつぼみが膨らんで紫色に着色し始めたら植え付け時ですが、時期について特に注意が必要なのは十分に温かくなってから行うという事です。
開花直前の植え付けは、言い換えれば授粉の準備段階と言えます。
その授粉がうまくいかないと『石なす』と言って固いナスが出来ます。授粉が出来ない理由は多岐にわたりますが、その内の一つに気温の低さがあるのです。
気温が上がり夏になれば石なすの頻度は減少すると言われていますが、折角のなすを駄目にしない為にも、この時期の気温、水やり、肥料は十分に判断しなければなりません。

- 発芽温度:最適は20~30℃ですが、なすは変温操作(昼間30℃、夜間20℃)をするとよくそろって発芽します。
- 育生温度:最適は日中23~28℃、夜間16~20℃です。霜に弱く、マイナス1~2度で凍死します
- 光飽和点:なすは野菜の中では低めの様です。弱光下の障害では徒長・短(中)花柱花・落花・果実不良・着色不良などが見られます。
一番花開花直前の苗の望ましい状態
本来の一番花の開花直前の苗の姿を箇条書きにしてありますので、植え付けの際にご参考下さい。
私のなすを比較してみると…
植え付け時期に相応な苗の状態と私の苗の写真とを比べてどれくらい差があるか見てみました。

現在は落ち着いてきたものの…長花柱花は厳しそう
5月13日に花が咲きましたが、案の定、中花柱花でした。
定植時期の草勢判断


栄養不足や日照不足、高温などで草勢が弱まったときは、短花柱花が多くなって落下が増えるそうです。即効性の肥料を追肥すると良いとのことでした。
一番花が着果しなかったらもう手遅れ?
初期の草勢のバランスをとるためには、まずは一番花を着果させることが大切だと聞きます。
植え付け後6月上旬までは、夜間の気温が低く着果しにくいので、3~5番花くらいまではホルモン処理(トマトトーン)で着果を促します。
1~3番果位までが順調に着果すると草勢が落ち着き、成り癖が付くと言われていますので、その後はホルモン処理をしなくても着果していきます。
既に苗が徒長気味でしたので、早めにトマトトーンを購入して散布しておきました。14日には吸水が異常な位ありましたので、一応実はついてくれるかなあと期待しています。
ホルモン処理の使用について
トマトトーンと主な作用
植物成長調整剤でトマトやナス、メロンの花に散布し、着果を促す為の植物ホルモン剤です。
使用法は、所定の量を水に希釈してスプレーで散布します。濃度は植物により異なりますので、説明書をご覧ください。
『オーキシン』という成長を促す植物ホルモンの作用を利用している為農薬とは区別されたホルモン剤です。このオーキシンは発根促進剤にも使用されています。
主な作用
- 初期収穫量の増加。
- 低温、日照不足などの条件下でも着実に着果出来る。
- 石ナスの予防。
500円程度で購入できますが、散布用スプレーは付属していないので百均などの小さなボトルを準備しておくと良いでしょう。
石なすとは
花は授粉して結実しますが、環境が整わないと授粉を行う事が出来ず、『単為結果』という、子房のみが大きくなって結実してしまう現象がおこります。石なすになるととても固くて食するのは到底無理だそうです。
石なすが出来る原因は様々です。
- 開花期の低温、或いは高温の為の受精障害
- 水分、肥料不足
- ホルモン不足
- 窒素過多による草勢繁茂
- 日照不足
私は2株を水耕栽培で、2株を土壌栽培で育ています。
水耕栽培の場合の追肥について念頭になく、液肥の葉面散布をすることをすっかり忘れていましたが、根が弱っていて根からの栄養の給水が困難な場合には葉面散布で栄養を補います。
一番花が開花してから始めましたので、2番花が今回より良くなると良いのですが…。
中花柱花が長花柱花に?
14日にトマトトーンを散布し、16日までの二日間液肥を朝夕2回葉面散布していたところ、一番花のめしべが伸びてきました。これは、着果の兆しでしょうか?それとも雄しべが干からびて縮んでいるだけでしょうか?
今回は実だけはつきそうですね。

日照問題と光合成
ところで、ナスやトマトは苗を購入した4月18日よりずっと室内で栽培していましたが、つぼみを観察した後の5月初旬ごろから外に出して日の光を当てるようにしました。
すると水溶液を朝満水にしていたのが、16時頃には半分以下の量になるなどその吸収力は本当にすごかったです。肥料食いと言われるわけですね。
じっくり観察してみると、夜間やくもりの日の吸水量はさほどでもないのですが、日中の晴れた日ではその差は歴然です。
日の光との関係がどうにも気になりましたので調べてみました。
植物が日の光を必要とするのはそれをエネルギーとして光合成を行う為で、(光を必要とする明反応と必要としない暗反応により)植物は最終的に有機化合物を合成して、根の発育に用いて行きます。ところが、光は光合成を駆動する一方で障害も引き起こすそうです。つまり光は沢山あれば良いというものではないようです。
植物は光を受けて光合成を行い、エネルギー(ATP)を作り出して成長しますが、強すぎる光は植物にとって有害であることが知られているそうです(私は知りませんでしたが…)。
特に曇り空から雲が去り、急に晴れ間がさした時などは急激に光の強さが変わるため、強い光に対して迅速に適応しなければ光合成器官が破壊されるそうです。
光が強い条件に適した光合成の仕組みだと光がそれより弱い時は光合成効率が下ります。効率を上げるのであれば、中程度の光の強さに適し、強光に対する防御作用を持つ方が良いのですが、この防御システムもまた、それを上回る強光下では活性酵素が生成されダメージを負う事になるのだそうです。
また、光合成の速度は、温度と二酸化炭素に依存すると聞いた事があると思いますが、光合成の速度は30℃で最大に、30℃以上では光合成速度は急激に低下していきますので、私が先ほど申しました、「外に出したら吸水がすごかった」と言うのは、温度の関係もあったようですね。
確かに5月7日以降は30℃前後で、かつ良い天気でしたから植物にとっては心地良かったのかもしれません。
退屈なお話しになりましたが、みなさんのなすはご機嫌いかがでしょうか。
沢山収穫できると良いですね。