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発芽と徒長の関係
発芽と言うと土から双葉が出た状態を思い浮かべるかもしれませんが、厳密にはこれを『出芽』と言い発芽とは区別されています。発芽とは種から幼根が出た状態の事を言います。

カイワレ大根はスプラウト野菜であり、発芽直後の新芽野菜です。実は、豆苗もカイワレ大根も店頭で見かける姿が最終の形ではなく、きちんと成長して花をつけ種を作ります。
では、カイワレ大根や豆苗も普通の野菜のように種から土で栽培したら、こんな風にひょろひょろとは伸びずに成長するのでしょうか?
実はスプラウト野菜は、培地の上で敢えて密集させ、光を与えずに育てる『徒長』した苗の事だったのです。なので、普通に育てる事も出来る野菜の種と言えます。
従って、種が必要以上の水分を吸収し、光が不十分な環境に置かれた場合には徒長する傾向にあると言えるでしょう。
三つ子の魂百までも…と言うように、発芽から幼苗までの出来は、それから先の開花や結実ににも影響するようです。発芽をうまくさせてあげられないときは、『芽だし播き』という方法をとってみて下さい。
嫌光性種子の芽だし播き
- 容器にキッチンペーパーなどを敷いて水を含ませ、その上に種を置きます。
- 発芽適温下で遮光をし発芽する(幼根が出る)まで種が乾燥しないように霧吹きで湿らせます。
- 発芽を確認したら水はけのよい土に植えます。

※スプラウト野菜の栽培方法は『種まきに失敗?!スプラウト栽培から発芽の仕組みを理解してみて』をご参照下さい。
発芽条件

⑴種まきと水やり ~水と休眠打破~
種子には発芽をしないようにする為の機能が備わっており、アブシジン酸という植物ホルモンが発芽抑制物質である事が分かっています。
種は通常発芽抑制状態、つまり休眠状態にあり、吸水により種皮を破って発芽(発根)をするのです。
一般に植物体は 75% 以上の水分を含んだ状態で活動していますが,保存時の種子の水分は 10~ 20% のしかなく,休眠状態になっています。水を吸収した種子は休眠(一次休眠)からさめ,体積が 2.5 倍,質量が 2倍にもなるのです。
ところが不利な状況にある種は再び休眠(二次休眠)に入ります。この性質をもつのがレタス、ゴボウ、ほうれん草で休眠打破処理として芽出し播きをします。
ほうれん草の夏まき栽培と芽だし播き
- 種を一昼夜水に浸けてから洗い流します。これは、吸水した種には発芽抑制物質が付着している為です。
- 次に冷蔵庫に入れて発芽(発根)を促します。ほうれん草では高温が発芽抑制因子だからです。
- 発根が確認出来たら種まきをします。
⑵種まきと土 ~光と温度~
発芽の際に光を必要とするものを好光性、光を避けるものを嫌光性と言います。
好光性の場合、覆土が多いと発芽できない場合があります。また覆土しない植物もあります。
嫌光性では覆土をします。それぞれの種の説明をよく読んでおきましょう。
温度によって発芽状況は変わりますので、種まきの参考にして下さい。

⑶種まきと水と土 ~酸素~
吸水により種は目覚めますが、水分が多すぎる場合酸素が欠乏し発芽できなくなります。
良い土と言われるのは水はけの良い酸素を含む土壌を言いますが、土壌中では微生物もまた呼吸をしている為酸素を消費し二酸化炭素を排出しています。
播種の前に土を耕す作業は土を柔らかくする為だけでなく、土壌中に沢山の酸素を送り込む意味合いがあるからです。
ところが水やりなどで水分を多く含んだ土は酸素の層がなくなり、密となって固くなるので植物や微生物の呼吸を妨げます。
その為、水槍の際にはジョウロで優しく、又は上から霧吹きをするのです。水圧がかかり種が流れてしまうのを防ぐ目的だけではないのですね。
プランター栽培は水はけが劣る分、初期の水やりにはに特に注意して行いましょう。
春播きと秋播きについて
春や秋はいずれも気候が穏やかで種まきの季節と言えます。
それぞれに難点があるとすると春まきでは虫がつきやすい事、秋まきでは急激に気温が下がるタイミングがある、という事です。
※アブラナ科の代表的な野菜:ブロッコリー、芽キャベツ、カリフラワー、ケール、カラシナ、カブ、およびハクサイなどを含むルッコラ、ダイコン、ワサビ、クレソンなどです。
アブラナ科は容易く虫がつくので虫ごとの対策をする必要があります。
秋まきの野菜は寒さに強いと言われていますので、種まきのタイミングを気を付ければ初心者向きと言えるのは秋まきです。
代表的なのは、大根、白菜、ほうれん草、ブロッコリー、スナップエンドウ、春菊です。またその内、春撒き・秋まきについて詳しい内容を作って行きたいと思います。
百均の土でもちゃんと発芽するの?
今は百均にも園芸用品が取り揃えられ、土は勿論肥料の調達をする事も随分便利になりました。ホームセンターとは違い、少量で揃える事が出来るのもうれしい要素ではないでしょうか。
ただ、本当に大丈夫なのかな~と気になりましたので、ホームセンターの土と比較をしてはつか大根を育てる事に致しました。
ついでに種子から発根までの日数、吸水した種としていない種、間引きしたものとしていない苗、での実の成り方も併せて観察してみます。
間引きについては観察途中という事で結果は後日になりますが、発芽状況⑴と⑵だけここで結果を載せます。また、以下の観察をする上で発根がいつ頃になるかを別の形で見ています。
⑴土の違い
百均で購入した土とホームセンターで購入した土で違いがあるかどうか
- 百均の土で発芽するか⇒する
- 水はけはどうか⇒ 良い ※百均の方がやや乾燥が早い(気がした)
- 発芽にかかった日数⇒一番早い種で5日 ※百均の方が一日早い
⑵種子から発芽(発根だけ確認)までの日数
- 種子に水を18時間含ませた種と含ませていない種での観察
- ⑴ ⑶ ⑷ とは別の容器で発根のみ確認しました。※その後の成長は、『はか大根の成長記録』として改めて後日投稿します。
⑶吸水した種の出芽(土から双葉が出る事)日数
- 予め水分を含ませた種と含ませない種での発芽状況の違いはどうか
- 発芽にかかった日数 吸水ありの場合と無い場合
- 徒長など外観の違いの有無
⑷間引き(観察中にて後日記事を作成)
- 間引きをしたものと間引きをしなかったもので、はつか大根の形への影響を調べる
- 適切な間引きを行う場合
- 一切間引きをしない場合
- 不十分な間引きをした場合
今回は、発芽に関する⑴~⑶についてのみ結果を記載しますが、⑷については調査中の為、後日改めて『初めてのはつか大根 失敗例~丸くならない理由~』で記事をまとめて行きます。

観察の手順
- 百均の土とホームセンターの土を、其々プランターを分けて2つ作り、奥に吸水処理をしていない種を、手前に8時間吸水させた種を其々播きました。
- 詳細な成分比較は避け、百均とホムセンで異なるか、という区分のみで観察しました。
- 中央のビニールひもは、間引きするかしないかの境界線で、今後上記⑷の3通りに分類して成長の違いを見て行くつもりです。
- 播種日は5月6日 気温は25~30℃前後でした。
事前準備
事前準備 発根するまでの時間確認
- 初根観察については、18時間水にけた種とつけていない種を透明のカップに半分ずつ見えるように入れ、発根までの時間はどれくらい要するか見ました。※諸事情により8時間吸水で出来ませんでしたので参考値として。
- 共に同じ日に初根しますが、吸水後の方が早く発根しました。

観察⑴~⑶の結果

私が実際に行った事
- 水やりは播種日にたっぷり与えました。雨の日は室内に入れましたが、それ以外は外に置きました。
- 12日に出芽を確認しましたが、土の表面は湿っていたようなので、特に何もしませんでした。
- 13日でも土の表面は少し湿っていたようなので、2回目の水やりは13日21時に、それぞれのプランターに約200㎖(控えめ)ずつを与えました。
結果考察

赤線より上部は吸水していない種 赤線より下部は8時間の吸水をした種
- 吸水させた種は今回の土質に関らず出芽は不良でしたが、吸水していない種は出芽は良好でした。この事から、種子の時期に水やりが多すぎる(吸水してしまう)と発芽しない、若しくは発芽しにくい事が分かりました。
- 14日に一回目の間引きをした際に抜いた芽の根っこは百均の方が乾燥が強く、根先端部の毛根が見て取れました。ホームセンターの芽は根毛はあまり見られませんでした。※間引き以降については今後記事にします。
- 又発根までの期間が通常3日程度とすると、上記2も踏まえ2回目の水やりは4日目以降、6日以内が望ましいかと思いました。
発芽に関して以上の様な観察をしてみました。
専門家の指導は勿論ないので、趣味程度で恐縮ですが、どうしても、
何としてでもまん丸くて真っ赤なはつか大根を作りたいのです。
この状況が育成にどのように影響するか分かりませんが、また経過をまとめていきますね。
発芽をしない理由
- 圧倒的に多いのは水切れ若しくは水が多すぎ ⇒ 表面が湿っていると大丈夫かと思いますが、植物にとっては既に水不足になっているようです。芽が出たらはじめに間引きをして根の状態を見てみるのも良いでしょう。
- 土を固くかぶせている ⇒ 種まき後、手で強く押しすぎている場合や、水をやりすぎている結果として土壌が硬くなる事があります。
- 土をかぶっていない ⇒ そもそもかけ方が薄いか、水やりの圧がかかりすぎて種が流れているかが考えられます。ジョウロで優しくまたは霧吹きを使用します。※プランターでは特に注意
- 土の異常 ⇒ 新しいものを使用するのが無難
- 最適温度を守れていない ⇒ 気温、地温共に関係するので、播種は個々のタイミングを間違えないようにします。
挿し木(穂)と発根の関係
植物が成長していく上で、種が休眠から目覚め発根することが大切である事が分かりました。
所で、種からではなくても植物は発根する事があります。挿し木(穂)です。
先日トマトの脇芽かきを行い、それを挿し芽にしたところ根が付きました。

脇芽や挿し穂(挿し木に用いる枝の事)は水分を吸収する組織である根が切断されています。その為植物は自ら体を癒す為に癒傷組織を形成して、発根を促す植物ホルモン(オーキシン)によって発根するそうです。
挿し木に向いている種類もあるようですが、挿し木が成功するかどうかは結局発芽同様、環境条件によります。
挿し木の手順
⑴新梢からとられた枝を使用します。
若すぎず古すぎないものが望ましい。具体的には手で折る際にポキッと音がする程度の固さの物を選びます。
⑵木や茎は一定の長さに切ります。
切断された状態でも植物は葉(気孔)からの水分蒸散を繰り返しています。葉から蒸散される(逃げて行く)水分が、挿し穂の部分から吸収される水分よりも多くなる場合には植物はしおれて行きます。
このような対処として、葉からの蒸散を押さえる為に葉を減らすという方法があります。
⑶切った挿し穂は水の中に一定時間(数時間から一日)つけておきます。
⑷排水性の良い土に植えます。
有機物や肥料があると雑菌が繁殖しやすくなるため赤玉土、川砂、パーミキュライトなどが適しています。
⑸20~25℃が適温です。
梅雨時期が丁度良いとされています。
⑹日当たりの良い場所に置ます。
日あたりの良い場所に置き光合成を促します。これは光合成によって生成された炭水化物を養分にして発根していくからです。
但し、強すぎる光は反って光合成を阻害しますので、時期によっては直射日光に当たらないように注意が必要です。
⑺水やりは多めにし、用土の乾燥を防ぎます。
※注意が必要なのは発根前後は水を控える、という事です。こうする事で根が水を求めて発達していくからです。
トマトの挿し芽と収穫
6月頃(梅雨時期)に挿し木をすると失敗も少ないと言われており、うまく根付けば8月頃に収穫できる筈とのことです。
脇芽かきをされた際には保険をかける意味でも是非してみると良いでしょう。
今回は発芽に着目して記事をまとめました。ご参考になれば幸いです。