
11月12日:播種後9日日目 移植後6日目
【家庭菜園】秋の種まき失敗知らず ~ホウレンソウの種まきのコツ~
目次
初心者に向いているスプラウト栽培とは
キッチンの出窓で手軽に出来る水耕栽培の一つに『スプラウト栽培』があります。
スプラウトとは発芽直後の新芽の事で発芽野菜を言い、代表的なのは、もやし、カイワレ大根、ブロッコリースプラウト、豆苗などでしょう。
エンドウ豆が発芽した豆苗は、一回食した後も水を与えるだけでまた成長するので二度楽しめる野菜として人気があります。
このように新芽を食する習慣は古くからあり、日本ではカイワレ大根が、欧米ではマスタードスプラウトが、中国ではもやしが栽培されていました。
かつては、ひ弱な子供の事をもやしっ子などとからかう言葉として用いられ、虚弱なイメージが強いスプラウトでしたが、意外にも栄養が豊富と言われています。本来成長して行く為の栄養が、新芽に凝縮されているからだそうです。
白米は玄米を精白した物ですが、白米よりも発芽玄米のほうが栄養があると言われるのも、同じように新芽に栄養が豊富にあるからなのです。
今日のスプラウトは、工場で光・温度・水を管理されているのでいつも同じ姿をして通年栽培されています。またいつでも安価に手に入るようになりました。
スプラウトが初心者向きといわれるのは、収穫までの期間が短く、土や肥料を使用せず、キッチンの窓辺といった場所をとらないで栽培できる手軽さがあるからです。
では、発芽について何も知らない初心者さんでも、失敗せず簡単に栽培する事が出来るのでしょうか?その辺りを栽培スケジュールと共に見てみます。
スプラウト野菜の栽培スケジュール
スプラウト野菜は栽培の行程により ⑴もやしタイプ ⑵カイワレタイプ ⑶中間タイプ の3つに分けられます。※4つに分ける文献もあります。
⑴もやしタイプ:1週間から10日で収穫
特徴:出荷をするまで暗室で育て、緑化をさせないものです。
品目:緑豆もやし、大豆もやし、アルファルファなどがあります。
⑵カイワレタイプ:発芽後7~10日で収穫
特徴:茎が伸びるまで暗室で育て、その後に光を当て緑化させます。
品目:カイワレ大根、ブロッコリー、マスタード、豆苗 があります。
⑶中間タイプ:発芽後3日程度で収穫
特徴:暗室栽培で、発芽後に光を当てて緑化させます。
品目:ブロッコリー などがあります。
スプラウト栽培の条件
以下の3点について気を付ければほぼ間違いなく収穫出来る筈です。特に⑴~⑶は植物全般の発芽条件になりますので覚えておきましょう。
⑴ 温度:最適温度 20~25度
夏場の高温期や30度近くになると発芽しなくなります。カビの発生や腐敗が起ると悪臭がするのでその場合は中止します。
⑵ 水:水分が多すぎる場合には酸素不足になり発芽が阻害されますが、不足しても停止します。
⑶ 酸素:密閉容器の使用は避け通気性の有る物を使用します。
⑷ 光線:初期に光が当たると発芽しなくなります。
栽培記録 ~カイワレ大根の場合~
準備するもの
① 種 種は、スプラウト栽培用の種が販売されていますので、開封後はなるべく使い切るようにします。

② 容器 今回はお弁当用のパック、ガラス瓶、遮光(生クリーム)紙パックを用意し、水分の条件を変えて成長の違いを見てみました。

➂ 不織布のネット又はガーゼ ④ 輪ゴム ⑤ 水切りとボウル
※種を洗う場合に水切りとボウルが必要になります。不織布シートやガーゼは蓋の変わりにします。それを留める為にゴムが必要になります。
⑥ 暗所の棚に保管できない場合は、遮光用の入れ物
手順(袋に書いてあったもの)
⑴培地を容器にセットする
洗った容器に培地を入れ、培地が浸るくらいまで水を入れます。培地の上に種が重ならないように入れます。
⑵暗所で保管する
暗い場所に置き、発芽するまで水を切らさないように与えます。根が張ってからは毎日水を取りかえます。
霧吹きを使用して表面が乾かないようにします。
温度は20~25度位が良いと言われています。暗い棚などがなければ箱に入れて光が入らないように保管します。今回は発泡スチロールの中に黒ビニールを入れました。
⑶丈が10~12㎝で緑化させる
高さが10~12㎝になり双葉が開いて来たら、日当たりの良い窓際に置き、緑化させます。2~3日ほどです。この時、直射日光と乾燥を避けます。
⑷収穫(1週間から10日)
通常1週間から10日程で収穫時期になります。収穫は使用する分だけを切り取り、付着した種皮を取り除き、流水で綺麗にあらってから調理します。
栽培結果
⑴袋に書いてある通りに栽培した場合

もう少し減らしても良いでしょう。
発芽日:2日目
スポンジ培地、キッチンペーパー培地とも問題なく発芽しました。
3日目(5月9日) 根毛確認

根が7~8mm伸びると「根毛」というふわふわの根が見られます。
一般の植物の根にも存在していますが通常肉眼で見る事は出来ません。ですがこの時期のカイワレ大根では見る事が出来る貴重な組織です。
生クリームパックを使用した物は、蓋は完全にしませんでしたが、輪ゴムで留めた際に閉まり過ぎたせいか中に水滴がたまり根毛が見えにくい状態になっていました。次のガラス瓶ではよく見えます。
5月11日pm22時 丈は10㎝位になりましたが、生クリームパックからこもった「におい」(腐敗臭ではない)がきつくなったので、容器を変更しました。良く洗い根っこを確認しましたが、白い綺麗な状態でにおいも消失しましたので、このまま栽培を継続します。
2~3日で収穫できそうです。

⑵袋に書いていある手順を無視・アレンジした場合
①種を一晩(8時間前後)水に浸けて置いた場合

発芽日:2日目(5月8日)

ガラス瓶で、8時間吸水させたあとは綺麗に洗い、不織布のキッチンペーパーを3枚程度重ねた培地の上に重ならないように播きました。
その後は種の袋の指示通りに栽培したところ、特に大きな変化はなく発芽しました。
3日目(5月9日)

ほぼ変わりなく初根しました。
是非一度栽培されて、ふわふわな綿の様な「根毛」を楽しんでみて下さい。容器に入っている時はよく見えますが、手やピンセットで触れると一瞬ですぼんでしまうので分からなくなります。
6日目:この時点で、成長が悪かったような気がします。
初日に吸水をさせただけですが、丈の伸びが今一でした。
またガラス瓶も高さが出てしまい、酸素供給がうまくいかない為か、下の方で成長が止まっているように見えます。

緑化日:8日目(5月14日)
収穫日:9日目(5月15日)以降
②種が浸る位(やや多め)に水を与えた場合

発芽日:2日目(5月8日)

発芽日は2日目でしたが、他のものと比べると半分程度の発芽率のように見えました。
3日目(5月9日) この時は他とほぼ変わらず初根しました。引き続き水多めで経過を見ます。

6日目:カイワレを丁寧に洗ったところ、発芽出来なかった種がかなり流れ出てきました。
隙間が空いているように見えていたので、容器が広いせいかと思っていましたが、発芽出来ずにいた子があったからなのですね。

緑化日:5月13日(7日目)
まだ不ぞろいでしたが、水を多く育てた種のため、これ以上の成長は(私の都合で時間的にも)難しいかと思われたので、少し早かったのですが予定上ここで緑化に入りました。
こちらは、13日午前7時にLED下で照光しました。
収穫:8日目(5月14日)以降
➂培地を横にした場合

5日目のカイワレを使用して培地を横にし暗所に保管したところ、一日足らずで上を向いていました。逆さまにしてもUターンをして上に向こうとするそうです。その後また元の姿勢に戻しました所、夜には上向きになっていました。

このカイワレは、3つのうち唯一袋に書いてある通りに水を与えた子です。スポンジ培地にした事で根もしっかりとついているので、一番成長は良かったような気がします。容器を変更して正解でした。
④緑化日を早くした場合


発芽した翌日に一部を取り出し、翌朝日光に当てた所半日ほどで緑色になりました。
5月11日 独り立ちしようとするカイワレ大根

丈の成長はありませんでしたが、容器の中で一生懸命自立しようとしていました。
その姿はあまりにも健気に思えました。
深い緑色になった後は変化は停止しました。
収穫:5月13日に撤収し、美味しく頂きました。
⑤LEDライトを用いて緑化を促した場合

左は種に吸水処理をしていない物、右は多めの水で育成した物です。既に、吸水した物の方が茎が細い事が分かります。ただ、ここでは、ライトで緑色化を本当に促せるのか、というのを見ました。
右の苗は室内の明かりの入らない棚にLEDライトを設置して7:00~17:00まで照射しました。
左側の物はキッチンの東側の窓辺(午前中のみ日光が差す半日蔭)に置き6:00~17:00まで置きました。
下の写真は、時間の経過を番号順に示し①7:00 ②9:00 ③11;00 ④15:00で変化を見たものです。
②の11:00の時点で、LEDの方が若干緑色が濃いと思われました。
その後もLEDの方が濃い緑色となりましたので、17:00で比較を終わりにして、「LEDの方が緑色化は早い」と結論しました。
尚LEDは照射時に熱を放出するので、植物の乾燥に注意が必要です。
※今回使用したLEDは『2.水耕栽培を始める前に ~ 準備するもの ~』をご参照下さい。

スプラウト栽培考察
成長に影響を与える要素
⑴容器の選び方
①ガラス瓶や生クリームパックの様な深さのあるもの ⇒ 不向き
- ネット情報で見た手順から、ガラス瓶やキムチの瓶を推奨していた為用いましたが、成長が早いものが瓶の出口を塞いでしまい成長の遅い種が育たないようでした。密度を減らして種をまくなら問題ないと思います。
- 根が張ってからは毎回流水で洗っていましたが、容器の丈があるほどにおいがこもる為、避けるべきかと思いました。
②お弁当のプラスチック容器 ⇒ 向いている
- プラスチックのお弁当容器は深さが丁度良いのではないかと思いました。ただ、スーパーに並んでいるもののように生え方を揃えるのであれば、ビニールで囲うなどの工夫が必要かもしれません。
③タッパー容器 ⇒ 最適
- 深さ4~5㎝程度の容器が最も適しているように思えました。カイワレは自立しようとする植物なので丈は高すぎず、低すぎないものが良いと思いました。
⑵ 水の与え方
①吸水処理 ⇒ 不適切 発芽はするが成長不良
- 発芽自体は吸水によって肥大するから処理をしていない種より早く発芽する(殻を破れる)のではないか、と考えました。
- ただ、発芽率の悪さは酸素不足かと思っています。
- 吸水させ、ガラス瓶に入れて育成した物は酸素供給も悪く不ぞろいの苗が目立ちました。
②多めの水で育成 ⇒ 不適切 発芽不良
- 発芽率は不良でしたが、発芽できたものに関しては他の要素(プラスチックのお弁当容器は酸素が十分だから…)によって?、成長した方だと思います。
⑶ 栽培に際し最も適した物品と方法
- 深さ4~5㎝程度の容器ににスポンジ培地を敷き詰めて使用。
- 播種はやや少ないかな、と思うくらいで十分
- 水分は培地に浸るくらいで多すぎてはいけない
- 手順は(袋があるなら)袋の通りにするのが一番
今回以上の様な結果が出ました。
私のさじ加減などもあるかも知れませんが、少なくとも、発芽前に多量の水を与えた場合には、発芽後の生育は不良となりますし、育生中の密集もまた不ぞろいになる原因の一つと言えそうです。
皆さんも是非一度お試し下さい。
他の野菜と比べて難しさは?失敗するのはどんな時?
繰り返しになりますがスプラウトは、収穫までの期間が短く、また作業工程も圧倒的に少ない為、他の野菜と比較すれば優しいと感じます。ですが水分量や密度で成長に差が出る事が分かりましたので、容器選びや初期の種の扱いでは失敗する事もあるかも知れません。
こうして育ててみると、店頭に並ぶような背丈の揃ったカイワレ大根を育成する事はかなり難しい事なのだと知りました。
またこうした発芽条件や育成環境を理解する事は、他の野菜の成長を理解する事にもつながると思いますので、ここでしっかり栽培できるようにしておきたいものです。
スプラウト栽培失敗例 発芽しない原因は?
⑴培地を乾燥させてしまった 水切れになり発芽しません。培地の準備をしたときに十分湿らせるようにします。
⑵水を与えすぎてしまった 酸素不足により発芽が出来なくなります。種もおぼれてしまいますので、霧吹きで適度(水滴が滴らない程度)に種を濡らしてあげます。
⑷与える水の量が少なかった 発芽遅れや、成長が停止します。
⑷発芽温度を守れなかった 5度以下、30℃以上では発芽しません。温度計で確認することが望ましいでしょう。
⑸光を当ててしまった 成長が停止します。
⑹水交換をしなかった 根が腐ってしまいます。根が張ったら毎日水を変えましょう。
スプラウト野菜をそのまま育てるとどうなる?
豆苗やカイワレ大根はスーパーで購入し再生野菜として2度、3度育てる方も多いかと思います。一般に3度目は固くなり、味にもえぐみが出てしまう為、美味しく食す事が出来るのは2回目までの様です。
豆苗にしろカイワレ大根にしろ放置をすると花をつけ、また種がとれます。ちなみに豆苗はエンドウ豆のさやを付けますが、カイワレ大根は大根にはならず、エンドウ豆のようなさやを付け種を持ちます。という事は、スプラウトも他の植物同様に育つわけです。

ここで、他の野菜栽培との違いをお気づきでしょうか?
種を播くというのは一緒ですが、①間引きをせずに②毎日水をかえ➂光を与えないと言う点が大きく異なります。これは通常の栽培ではしないように意識している事ではないでしょうか。
通常野菜の栽培は、発芽し出芽したら光を当てます。土の表面の水分が乾いている場合はお水を与えますがそうでなければ控えていますね。そうして株が育つように間引きをしている事でしょう。これをしないと芽は『徒長』してしまうからです。
つまりスプラウト栽培は、敢えて徒長するように栽培する、と言う禁断の(笑)野菜なのです。
『初めての種まき 発芽の仕組みと徒長・挿し木(穂)の関係~』2020年5月14日に投稿した記事です。ご参照頂ければ幸いです。
発芽の仕組み
発芽と言うと土から双葉が出た状態を思い浮かべるかもしれませんが、厳密にはこれを『出芽』と言い区別されています。発芽は種から根が出た状態を言います。

種子は吸水により種皮を破り発芽(発根)します。
一般に,植物体は 75% 以上の水分を含んだ状態で活動していますが,保存時の種子の水分は 10~ 20% の水分しかなく,休眠状態になっています。水を吸収した種子は休眠からさめ,体積が 2.5 倍,質量が 2倍にもなるのです。
発芽が起る為の水分、温度、酸素の重要性はお分かりになったかと思います。
実はこの時期に吸水しすぎた植物は後の発育にも影響が出ます。特に水太りした種子は徒長しやすい傾向にありますので、吸水率は75~80%程度が『良い発芽』と言えるようです。
芽だし播き:野菜栽培において確実に良い『発芽』をさせてあげるのであれば容器の上で水分をコントロールして、発芽を確認してから土の中に植えてあげるのが良いでしょう。

11月3日

11月6日:播種後3日目
【家庭菜園】秋の種まき失敗知らず~11月に撒くなら芽出し撒き~

ダイソーのマグネット容器も便利
スプラウト栽培は単調ではありますが、この機会に是非挑戦して頂きたい野菜の一つです。
最後までありがとうございました。