はじめに
室内で手軽に家庭菜園を楽しむつもりで始めた水耕栽培でしたが、いざ始めてみるとそのむずかしさに驚きました。
ただ、まったく出来ずに諦めるという事ではなく、大きく育たない、色や形が悪い、といった課題が与えられる為、深みにはまっていくのかもしれません。
追及する事が楽しく感じています。
すでに投稿した『水耕栽培 失敗した容器』では、過去の失敗を振り返り、初代容器では栽培が不十分であったとして、以来使用せず、現在はペットボトルを利用している経緯をまとめています。
ここではこれまでの経過に加え、更なる問題点の整理と改善を試みた事、その結果として現在使用し続けている容器の感触をお話ししたいと思います。
注意
※2021年5月更新 当記事では初代容器を失敗に位置付けて、以後使用せず2020年にペットボトルを中心に試行錯誤(迷走)した経緯をまとめています。
ですが、2021年5月、初代容器を改良してペットボトル栽培と併用できる容器(移植型容器)としてご紹介記事をまとめたものが、現在気に入っていますのでどちらの方も是非ご参照頂きたく思います。
たた当記事(水耕栽培 自作容器の失敗から得た事とペットボトル栽培を勧める理由)では問題点を抽出したり、私の迷走ぶりが詳細に記載されていますので、失敗しない栽培の為に何かの約に立てれば幸いです。2021年版は下記からご覧いただけます。
【水耕栽培】100均アイテムで新自作容器~歴代の失敗容器を踏まえて~

2021年 ミニトマト ペットボトル移植型
【水耕栽培】スポンジ種まきから容器への移植まで~育苗ポットの利便性~

2021年 育苗ポット、ペットボトルの移植も可能に。
目次
自作容器を使用する事の条件整理
本来の水耕栽培は、専用の溶液や装置を使用して、温度、照度、水分、養分、酸素などを調整して植物の光合成を促しています。
具体的には、保温器、LEDライト、エアレーションシステムなどがあります。
ですが、メーカーが出す装置は高価であったり、おおがかりな装置である為、キッチンの隅や、ベランダで栽培をたしなむ程度であるなら割が合わなくなります。
その為に自作の容器を百均や手元にある物で作成するのですが、意識して作らなければならないのは、出来るだけ土壌栽培や専用器具を使用した状態に似せるという事になります。
そこで以下の5つの点を挙げてみました。
条件① 植物が安定した状態で姿勢を保持できる事
条件② 根からの酸素吸収が妨げられない事
条件➂ 根に光が当たらない事
条件④ 根が適度な抵抗を受けられる事
条件⑤ 葉の光合成を妨げない事
これら5つの条件は全て根に関するものになります。
ところが根の構造自体は実に単純で、花や実の様に植物ごとの特徴はなく、多くの植物で差異がありません。
これは、根が担う役割が ①水と無機質養分の吸収と光合成産物の通道 ②植物体の支持 というたった二つだけであり、土壌と言う変化に乏しい環境の中に存在しているからです。
根の解剖生理と意義
土壌中では、根が四方八方に伸びていますが、常に土の抵抗を受けながら伸長しています。この時土の抵抗(摩擦)を受けますが、この抵抗を守る組織(根冠)によって細胞分裂を繰り返す事が出来ます。つまり根は新しい細胞により伸長し古い細胞は落屑する(剥がれ落ちる)事を繰り返しながら伸長していきます。この新生から落屑は数日程度と言われています。
植物体の支持を担う根は、更に側根と根毛に分けられます。側根の内部には木部と呼ばれる組織が走行し、外部では更に細い根毛が生え、土をからめとりながら植物体を支えているのと同時に、根の表面積を増加させ、効率良く栄養を吸収させているのです。
水分を吸収させる力は浸透圧で、葉が気孔で水分を蒸散する事により養分が吸い上げられていきます。
私たちが通常目にしているのは側根で、根毛を肉眼で観察する事は出来ません。
※木部は維管束の一つで維管束は木部と師部からなります。師部は光合成産物である有機物の通路で、木部は水や無機物の通路です。
先ほど上げた条件を照らし合わせると、①と④をクリアする事が重要なのではないかと考えられました。
※これから述べる見解は私の個人的な感想です。
条件の検証
条件1 植物が安定した状態で姿勢を保持できる
穴に根を通して栽培するタイプの容器を使用する場合
ペットボトルや容器を自作してスポンジを差し込む


初代容器 可愛くてすきでしたが…失敗
結果 紫蘇やハーブなど小さな株の植物なら多少はいけると思いますが、種から育成する場合、時間の経過に伴ってスポンジが湿気を帯び、コシがなくなり根元がずりおちてしまいました。
問題点 その為株が育つ前に根ごと下におち、溶液に浸り過ぎてしまう事が最大の難点でした。
根が溶液に浸りすぎている事の不具合は、呼吸が出来ない、という事ですので、根が下がらない工夫をする必要があります。
液肥の量は、根の付け根付近が浸らない程度の水位が好ましいので、植物体はその位置を確保できるように固定されなければなりません。
条件2 根からの酸素吸収が妨げられない事
この点は、条件1に記載した通りです。
条件3 根に光が当たらない事
容器に遮光を施す→アルミホイルがお勧め
水耕栽培は溶液に栄養が十分あるので、光によって藻が発生します。藻を防ぐためにも遮光対策はした方が良いと思います。『水耕栽培 失敗例 藻が発生したらどうしたらいいの?なぜ藻が発生するの?』
容器にアルミホイルを巻いたり、黒いポリ袋を巻いて遮光します。
ただ、外観が良くないので、アルミホイルや黒ビニの上からリメイクシートを巻くと、外観を損ねることがなく、また容器を洗浄する際も問題有りません。
条件4 根が適度な抵抗を受けられる事
①エアレーションシステムの導入若しくは自作お=お好みで
②ペットボトルの場合、根を容器内に納める=2020年5月は行いましたが、2021年は失敗に位置付け、新たにペットボトル移植型容器を作成しました。
【水耕栽培】100均アイテムで新自作容器~歴代の失敗容器を踏まえて~
①について:メーカーが出す水耕栽培容器には、エアレーションシステムがある物もあります。また自作では、水槽用のエアーポンプを使用して作る事も可能です。
エアレーションは、一定時間、空気を送る事が出来、また気泡を立てながら水流を作るので、根を刺激する事が可能になります。
ただ、電源の確保が面倒・困難でしたり、そもそも手軽に栽培を楽しみたい方には不向きかもしれません。
私も以前使用していたのですが、今回は見送りました。面倒なのが理由です。
②について:ペットボトル内に根を収めるとは、写真を見て頂いた方が分かりやすいかも知れません。

※ペットボトルに苗を移植する時点でちぎったスポンジを入れて根が絡むように(落ちないように)入れてあります。詳細記事『なすの成長記録~ペットボトル容器が実は最適?根っこから見る栽培の手ごたえ』
左の写真:すこしずつ根が成長してペットボトルを圧迫しています。
右の写真:全体を上に持ち上げ隙間が空くようにして(赤まるの部分)根の伸長を促しています。これを繰り返し、株が大きくなったらペットボトルの深さを調整します。※詳細は記事の最期に記載しています。
はじめは圧迫される事は好ましくないと考えていましたが、エアレーションを行わない静的栽培になりますので、予想外でしたが、結果的には『根が抵抗を受けながら伸長する』という条件を満たしていたのではないかと感じました。
条件5 葉の光合成を妨げない事
①LEDライトの使用=光量が不足する場合、可能なら使用はお勧めです。
②植物体の茎を圧迫固定する事=不可
①について:室内で光量が足りない場合はあった方が良いかも知れません。育てる植物により光の強さは変わります。詳細は『水耕栽培を始める前に~準備するもの~』に記述してあります。
②について:光合成産物を運ぶ通路が根にあるので、ダメージを与える事は出来ません。
ペットボトル栽培が最適な理由
① 根の状態を常に、かつ細かく観察する事が出来る
ペットボトルが重宝しましたが、何といっても観察がしやすいという点に尽きます。
なすの栽培はどうしても株を大きく育てる必要がありましたので、必然的に大きな容器が必要でしたが、
お手軽な栽培を目指すのであれば極力可能な限り小さな容器を、という思いからペットボトルでの栽培に移行しました。
葉の状態が芳しくないなど根での問題が多くある中、上部の容器を少し持ち上げれば、先端部分は勿論、根の付け根、根元の茎まで観察する事ができるのですから、本当に便利でした。コンパクトさが良かったのだと思います。
②溶液を余すことなく与える事が出来る
通常、ペットボトルの下の容器には溶液を満たして使用します。
満たされた養水分は、植物の葉の蒸散と浸透圧作用により吸収されて水嵩が減ります。
ただ、水耕栽培の場合、濃度を一定に保つ為に、基本的に溶液を継ぎ足しする予定はなく、(少なくとも)2週間に一度の交換が推奨されています。
この点、(当然)容器の深さにもよりますが、2週間立たない内に量が減り、根の先端だけは浸っているのに、根元の方では乾燥しているという事が度々ありました。
液が少なければ捨てる事も出来ますが、結構残っている事もあり、捨てるには忍びない時もあります。とは言え、継ぎ足すと濃度が変わり成長に影響してしまいます。
偶然にも、根が中に納めた場合のペットボトル栽培では、キャップをして上から残った溶液を入れられるので、濃度が変わることなく根を潤すこが出来、また溶液を捨てる事もなくのなるので無駄なく使用する事が可能でした。これは嬉しいものです。

根が詰まってきたので上に少し持ち上げましたが、(写真左)、その分根元の方(上部の根)が溶液に浸らなくなります。
吸い口部分から出ている根を丁寧に中に収納して、キャップをし、残っていた溶液を上から全量注ぎました。
※ 植物の養水分の吸収(浸透圧)によって水溶液(水・窒素・リン酸・カリウム等をはじめとする栄養)は減りますが、物質は同じ割合で吸収されるわけではない為、各物質の残存量は、最初の溶液の比率と異なります。その為、継ぎ足しをすると結果的に濃度が高くなってしまうのであす。
➂株が大きくなっても鉢替えが楽
今回トマトの根が育ちましたので、ペットボトル容器をひと回り大きくしました。
先端部分はボトルの溶液に浸るのですが、根の上部が乾燥します。なので鉢替えをする為、根を傷つけないように抜いて、ボトル交換です。
この株は初めにペットボトルに移植した時に中央にスポンジのちぎったものを抱えるようにあえて根を配置していました。思う形になり容器内で安定した状態で体を支持しています。
1.5ℓから2ℓのペットボトル容器に変えましたが、溶液を入れる入れ物(ペットボトルの下の方)は他のプラケースに変えました。
また、プラケースの縁に引っ掛けて使えるように、ペットボトルは両面テープでフックを逆さにして留めています。
まだ溶液が余っていましたので、ペットボトルに蓋をして上から溶液を入れています。


その他お勧めの容器
百均小物を使用したアレンジ容器
小さな植物を何種類か一緒に育てられるのも、水耕栽培ならではと言えるのではないでしょうか。
そこで大きな容器に溶液を入れ、異なる種類の培地を個々に、あるいは一緒にセットして栽培する容器もご紹介します。
⑴吸盤付きスポンジ置きを使って
写真はリーフレタスです。キッチン用の吸盤付きスポンジ置きを内側に付けています。
スポンジ培地で種から育て根が出てきたら、このスポンジ置きに丸ごと移植します。根は網目を通って行きますので溶液はスポンジが浸らないようにします。
容器には遮光の為にアルミホイルを両面テープで貼り、その上からリメイクシートを貼りました。
このスポンジ置きには、10~12個入りのスポンジサイズが合うのでカットする必要がなくお勧めです。

一株ずつ育てたい時に
⑵アイアンラックに不織布の水切りシートを使用した容器
スポンジ培地で育てるならそのまま載せてもOKです。根は不織布も通過して行くので、水交換はラックを上げて行います。
株を分けないでまとめて水交換ができるのでずぼらさんに向いています。容器に遮光を施していない場合黒いビニール袋を内側からかけて使用しましょう。
かごはフック付きですが、縁のサイズにフックが合わない容器でしたので工具でフックを少し開きました。
また、ラックの他にも500㎖又は2ℓのペットボトルに、壁掛けフックを両面テープで逆さに貼れば、こちらも立派な水耕栽培容器になります。
両面テープは粘着度の強い物が良いでしょう。

いかがでしたでしょうか。
ペットボトル栽培に変えて、ナスとトトマトの状態把握が随分楽に出来る様になったと思います。
ここには書ききれない事は、また其々の成長記録に記載していきますので、ご興味おありでしたらどうぞそちらもご閲覧下さいね。
R3年5月13日新しい記事を更新しました。
こちらはこの記事の改良版になっています。どうそご覧ください。